青い月の夜に
気付けば時計は9時10分を示している。
私は慌てて辺りを見回したけれど、ハルキの姿は無かった。
「遅れないでねって言ったのに」
唇を尖らせる私を見て浩介さんが小さく笑う。
「あいつは気まぐれだから」
「浩介さんはハルキと親しいんですか?」
私の質問に浩介さんは「さぁ?」と肩をすくませた。
「あいつと出会ったのは3年前の雨の日、この店の前で。ずぶ濡れだったから店に入れたら居付いちゃってね」
呆れ気味に、だけどどこか懐かしそうに浩介さんは遠くを見つめた。