小さな恋のうた *毎日更新中*
『はい、静かにっ!!』


言ったのはオレじゃなく、大樹。


早川のため。


『じゃあ、次は早川』


大樹の声で静まった教室に向かって言う。


早川が恥ずかしそうにうつむきながら立つ。


大樹が心配そうに、でも優しい顔で早川を見ている。


『早川鞠です』


小さい早川の小さい声。


大樹とは対照的だ。


『好きなものは…本です。よろしくお願いします』


「鞠ちゃん、かわいいっ!!」


早川が座ろうとした瞬間、野球部の和馬が叫んだ。


早川が困った顔をして、大樹が和馬をにらんだ。


大樹は言っていた。


早川には少しずつ少しずつ近づいていきたいと。


早川が困るようなことはしたくないと。


多分、部室で大樹は和馬に説教するだろう。


『はいはい、何でも思ったことをすぐに口にするな。おまえらと早川は違うんだから、ビビるだろう』


早川が更にうつむいた。


大樹が申し訳なさそうに見ている。


大樹と早川。


偶然なのか運命なのか、同じクラスの同じ出席番号で隣の席。


早川を守る大樹の姿が目に浮かんだ。


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