魔王と王女の物語
唯一の魔法使いだった男コハクがある日、世界に向けて宣言した。



『今日からこの世界の王は俺だ!皆、ひざまずけ!俺の命令を聞け!』



――各国は揃って反論し、そして世界の外れ…針山の頂上に居城を作り、千里眼でその様を面白おかしく眺めていたコハクがひゅっと指を振ると…


湖がとても美しかったホワイトストーンという王国は…


一瞬で消滅した。

…数万の人々の命と共に。



『くくっ、だから言ったのに…。さあ、次はどこの国だ?』



黒い髪と赤い瞳――


時を止める魔法を自らの身体にかけて不死となった男は、面白そうなおもちゃを常に探していた。


「つまらないなあ…もっと面白いものはないかなあ。ああそうだ…」



無謀にも俺を殺しに来る男とか現れたら最高に面白いのに――


――コハクはバルコニーに出て、濃紫の空を見上げる。

長い脚で欄干に飛び乗り、両手を広げて不気味な空を見上げた。



「俺って死ねるのかな?誰か試してくれないかなあ。強い奴、現れないかなあ」



…昔は魔法使いは沢山居たのに。


動物を話せる魔法使いや、人々の役に立つ魔法を沢山編み出していたのに――


徐々に魔法を使える魔法使いは減って行って、

今じゃ自分1人。


莫大で無尽蔵な力を持て余し、


コハクは狂気じみた笑顔を浮かべて、


いつか自分を殺しにやって来る“誰か”を居城で待ち続ける。



「時間を無駄にすると、1つずつ国を壊してしまうよ。だから早くおいで」


――そして、ゴールドストーン王国から、一人の男が立った。



「俺が行きます。あの魔法使いを…魔王を必ず倒してみせます」



若々しく瑞々しい金髪緑眼の男は、針山の魔王の城へ向かう旅に出る。


そしてその果てに――



呪われた。

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