魔王と王女の物語
ブルーストーン王国と崩壊した国
「うわあ、すごい…」
首の筋を傷めそうなほどに高い壁がそびえ立ち、
四方をぐるりと取り囲んだ壁は分厚く、正面にある大きな扉には左右に鎖がついていて、どうやら機械で開閉しているらしい。
そして鎧と兜といったフル装備をした門番が2人立っていて、コハクはラスを抱っこすると門番に近寄り、偉そうに話しかけた。
「なあ、中に入りたいんだけど」
「通行証は?」
「無い」
「じゃあ駄目だ。ここの住人しか出入りできない」
呆気なく撃沈したが、腕の中のラスは、各国に名を轟かせる美姫。
勇者の一人娘であるラスの肖像画は広く知られており、まさにその王女が目の前に居た。
「あなたは…」
「私のこと知ってるの?私じゃなくてお父様をでしょ?」
自慢することなくにこりと笑いかけてきた無邪気なラスに、本物だと確信した門番2人が慌て始めて、
そしてさらに、馬車に寄りかかって成り行きを見守っていたグラースが近寄り、門番たちの口があんぐりと開いた。
「あ、あなたは…グラース王女!」
「こちらはゴールドストーン王国のラス王女で、あちらはレッドストーン王国のティアラ王女。2人共私の友人だ。通らせてもらうぞ」
――ラスの目がまん丸になって、さすがにコハクも驚いて、少年のような笑顔を見せた。
「へえ、お前も王女か。随分なじゃじゃ馬だな」
「…本当は戻って来るつもりはなかった。さあ、入ってくれ」
重たい音を立てて扉が左右に開き、そして現れた大きな城下町にラスが歓声を上げてコハクの腕から降りようとした。
「コー、降ろして!」
「やだね、チビは歩かなくっていいの!」
「駄目だよ歩きたいの。自分でなんでもできるようにならなきゃ」
「は!?駄目駄目駄目!俺がなんでもしてやっから!」
「なんでも?私、料理も覚えてコーに食べてもらいたいのに」
――途端魔王が掌を返してラスを大地に下ろした。
「食いたい!今すぐ!」
「練習してからね」
「やりっ!本当は今すぐチビを食いたいんだけど」
…黙殺。
脱兎の如くラスが居なくなる。
魔王、大慌て。
首の筋を傷めそうなほどに高い壁がそびえ立ち、
四方をぐるりと取り囲んだ壁は分厚く、正面にある大きな扉には左右に鎖がついていて、どうやら機械で開閉しているらしい。
そして鎧と兜といったフル装備をした門番が2人立っていて、コハクはラスを抱っこすると門番に近寄り、偉そうに話しかけた。
「なあ、中に入りたいんだけど」
「通行証は?」
「無い」
「じゃあ駄目だ。ここの住人しか出入りできない」
呆気なく撃沈したが、腕の中のラスは、各国に名を轟かせる美姫。
勇者の一人娘であるラスの肖像画は広く知られており、まさにその王女が目の前に居た。
「あなたは…」
「私のこと知ってるの?私じゃなくてお父様をでしょ?」
自慢することなくにこりと笑いかけてきた無邪気なラスに、本物だと確信した門番2人が慌て始めて、
そしてさらに、馬車に寄りかかって成り行きを見守っていたグラースが近寄り、門番たちの口があんぐりと開いた。
「あ、あなたは…グラース王女!」
「こちらはゴールドストーン王国のラス王女で、あちらはレッドストーン王国のティアラ王女。2人共私の友人だ。通らせてもらうぞ」
――ラスの目がまん丸になって、さすがにコハクも驚いて、少年のような笑顔を見せた。
「へえ、お前も王女か。随分なじゃじゃ馬だな」
「…本当は戻って来るつもりはなかった。さあ、入ってくれ」
重たい音を立てて扉が左右に開き、そして現れた大きな城下町にラスが歓声を上げてコハクの腕から降りようとした。
「コー、降ろして!」
「やだね、チビは歩かなくっていいの!」
「駄目だよ歩きたいの。自分でなんでもできるようにならなきゃ」
「は!?駄目駄目駄目!俺がなんでもしてやっから!」
「なんでも?私、料理も覚えてコーに食べてもらいたいのに」
――途端魔王が掌を返してラスを大地に下ろした。
「食いたい!今すぐ!」
「練習してからね」
「やりっ!本当は今すぐチビを食いたいんだけど」
…黙殺。
脱兎の如くラスが居なくなる。
魔王、大慌て。