魔王と王女の物語
ラスになら全てを話せる。


今まで隠してきたことも、全部全部。


「嬉しい。コーは私が聞かないといっつも教えてくれないから」


「そっか?チビが聴いてくれたらなんでも話してたぜ」


しゅんとなっているラスのお尻を撫でまくってぎゅっと抱きしめるとまだ固い表情のままのグラースを手招きして呼び寄せた。


「ここに残るつもりねえんだろ?だったら俺の城まで来いよ。俺とチビの結婚式に招待してやるよ」


その言葉に驚いたのはラスの方で、がばっと身体を起こすと元々大きいグリーンの瞳がさらに目一杯開かれていて、魔王を喜ばせた。


「結婚式って…私とコーの!?」


「あーチビにはまだだったかなー。城に着くまでに俺を好きにならせてやるって言ったろ?まだだったか?もう俺にメロメロだと思ったのにな」


「ち、違うもんっ。まだ好きじゃないもんっ!」


「ふうん」


ついにやにやしてしまうと意識してしまったのか膝から降りるとグラースに駆け寄り、腕に絡み付くと見上げた。


「ね、グラースも一緒に行こうよ。もうちょっと一緒に居たいな」


「そうだな、私もそうしたいと思ってた。…ラス、私はラスの味方だ。危険な目に遭ったら絶対助けてやる」


「チビを守るのは“勇者様”の俺の役目だっつーの!」


言い合いをしているとリロイたちが帰ってきて、明らかに変化している魔法剣に目を遣った。


「へえ、ちょっとは凄味が増したな。あとはイエローストーンだっけか?ホワイトストーンは見つけらんなかったし、そんな不完全な状態の魔法剣で俺を倒せるとでも?」


――リロイが微笑んだ。

ラスはその微笑みを見たくないのか、玉座から腰を上げたコハクに腕を伸ばして見上げた。


「コー」


「はいはい。じゃあ行くか。チビが早く俺の城に行きたいっていうからさー」


魔法剣は仄かな光を発していた。


自分が倒された時は、あの魔法剣は直視できないほどの光を纏っていたが、まだあれは不完全だ。


「父上、母上…さようなら」


「グラース…」


もう戻らない。


「グラース!出て行くな!」


ダリアン…さようなら。
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