魔王と王女の物語
一泊していっても良かったのだがとにかく早くコハクの城まで行きたくて、この前呼び出した真っ黒い馬のことをコハクに聴いてみた。


「ねえコー、あの空を飛ぶお馬さんに乗ればコーのお城なんてあっという間じゃないの?」


「まあそうなんだけどさ。チビもあちこち見て回りたいだろ?俺の城に着いたら見れなくなるかもだし」


「え、どうして?」


「だってガキができるまでずっとずーっとチビを離さないし」


「ガキって…赤ちゃんのこと!?」


コハクの言うことは今までいまいちわからなかったが、“愛している”と言われてからコハクが本気で自分のことを花嫁にしたいと思っていることだけはわかった。


時々コハクがものすごくかっこよく見えて、今もじっと赤い瞳で見つめながら一本道を歩くコハクと見つめ合って、笑われた。


「なんだ、発情したか?ボインを馬車から追い出してするか?」


「意味わかんない。発情?それって動物だけでしょ?」


「人間だって動物じゃん。ちなみに俺はいつも万年発情期…」


「影、口を動かすな。早く歩け」


「ああ?てめえ調子に乗んなよ、お前なんか…こうしてやる」


後ろを歩いていたリロイをやり過ごしたと思ったらぎゅっと脚で影を踏みつけ、途端に自由を奪われたリロイが横を歩いていたティアラの胸を…


わしづかみにした。


「きゃあ!!」


「!!こ、これは僕がしたわけじゃ…」


「うわー、チビ見たか?あいつヘンタイ騎士だぜ」


「リロイってヘンタイだったの?知らなかった」


言い訳をしようとしたが魔王はラスを抱っこしたままさっさと居なくなり、リロイはティアラに謝り続けた。


「申し訳ありません…!」


「い、いえ…」


「魔王の仕業だな。あいつ…子供か」


グラースが吹き出し、一行は王国を出て馬車と馬にそれぞれ乗り込み、次のイエローストーン王国へと向かう。


馬車で約1日の距離にあるイエローストーン王国は、魔王の城から1番近い場所に存在する。

よって水晶の森も近く、最も水晶の恩恵を受けている王国だ。


が…

ラスたちがまだ知らない。


王国の消滅を。
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