魔王と王女の物語
自分が孤立しているのをリロイも感じていた。
魔王を倒そうと意固地になっているのは自分でもわかっているのだ。
結局イエローストーンも手に入らず、聖石の加護を受けたのは、ゴールドストーンとレッドストーンのみ。
カイ王がコハクを倒した時は全ての色の聖石の加護を受けて、ようやく倒せたのだ。
それでも不死のコハクの命を奪うことはできなかった。
「…リロイ…」
「…僕は…間違っていません。魔王は倒すべき悪なんです。どうしてグラースもあなたもわかってくれないんだ…」
――リロイと同じ馬に乗り、白い息が空に消えていく。
自分が最近ラスとコハクは一緒に居た方がいいと思っていることを知られていて、リロイの細い腰に抱き着いた。
「魔王はもう、“魔王”ではありませんよ、リロイ…」
「…」
――それに応える余裕はリロイにはなく、
ただ北へ北へ向かううちに身体にびんびんと響いてくる魔力には気付いていた。
「そろそろ水晶の森に着くぜ。むやみに触るなよ、さっきの国みたくなっちまうぞ」
コハクが窓を開けて白い息を吐き、
それを真似するかのようにラスも顔を出して息を吐いて笑いかけてきた。
笑い返して前方に目を遣ると、
さっきまでは針葉樹地帯だったのに、気が付けば、森の奥には光を反射して煌めく水晶が見え隠れしていた。
「すごい…、集中していないと、意識が飛びそうに…」
「コー、なんとかできない?私も頭痛がしてきた…」
馬車から降りて顔をしかめたラスの額にコハクが手を翳すとすぐに頭痛は消えた。
今度はリロイ、グラース、ティアラに向けて指を鳴らすと、呼吸も身体も楽になり、魔王1人が平気な顔をしてラスを抱っこすると森の中へと入って行った。
「コー…つらくない?大丈夫?」
「平気平気。ここを突っ切ると師匠の家なんだ。チビこそつらくなったらちゃんと言えよ」
「うん、わかった」
まるで宝石のように輝く水晶の柱や、水晶の大木…計り知れないほどの魔力と価値の森。
だが迂闊に入り込むと、気が狂ってしまう。
――リロイは考えた。
これで、魔王を倒すことはできないか、と――
魔王を倒そうと意固地になっているのは自分でもわかっているのだ。
結局イエローストーンも手に入らず、聖石の加護を受けたのは、ゴールドストーンとレッドストーンのみ。
カイ王がコハクを倒した時は全ての色の聖石の加護を受けて、ようやく倒せたのだ。
それでも不死のコハクの命を奪うことはできなかった。
「…リロイ…」
「…僕は…間違っていません。魔王は倒すべき悪なんです。どうしてグラースもあなたもわかってくれないんだ…」
――リロイと同じ馬に乗り、白い息が空に消えていく。
自分が最近ラスとコハクは一緒に居た方がいいと思っていることを知られていて、リロイの細い腰に抱き着いた。
「魔王はもう、“魔王”ではありませんよ、リロイ…」
「…」
――それに応える余裕はリロイにはなく、
ただ北へ北へ向かううちに身体にびんびんと響いてくる魔力には気付いていた。
「そろそろ水晶の森に着くぜ。むやみに触るなよ、さっきの国みたくなっちまうぞ」
コハクが窓を開けて白い息を吐き、
それを真似するかのようにラスも顔を出して息を吐いて笑いかけてきた。
笑い返して前方に目を遣ると、
さっきまでは針葉樹地帯だったのに、気が付けば、森の奥には光を反射して煌めく水晶が見え隠れしていた。
「すごい…、集中していないと、意識が飛びそうに…」
「コー、なんとかできない?私も頭痛がしてきた…」
馬車から降りて顔をしかめたラスの額にコハクが手を翳すとすぐに頭痛は消えた。
今度はリロイ、グラース、ティアラに向けて指を鳴らすと、呼吸も身体も楽になり、魔王1人が平気な顔をしてラスを抱っこすると森の中へと入って行った。
「コー…つらくない?大丈夫?」
「平気平気。ここを突っ切ると師匠の家なんだ。チビこそつらくなったらちゃんと言えよ」
「うん、わかった」
まるで宝石のように輝く水晶の柱や、水晶の大木…計り知れないほどの魔力と価値の森。
だが迂闊に入り込むと、気が狂ってしまう。
――リロイは考えた。
これで、魔王を倒すことはできないか、と――