魔王と王女の物語
ローズマリーとのこと
巨大な水晶を見つめたリロイが何かよからぬことを考えていることにコハクは気付いていた。
だがそれも魔王にはさしたる興味を抱かせず、目下今から会う師匠がラスに何を話すかが心配で、ラスの身体をぎゅっと抱きしめながらぺろぺろと頬を舐めた。
「コー、くすぐったい」
「ちなみにこの道曲がった所が“水晶の墓場”。まさに墓場って感じだぜ。行ってみるか?」
「でも…コーは行きたくないでしょ?だったら行かない。早くお師匠様の所に会いに行こうよ」
――実際問題、師匠と会うのは数百年ぶりだ。
不死になり、師匠から全ての術を学び、そして実験好きが高じて新たな魔法をも編み出したコハクは、ここから出て行った。
出て行ってからは一切連絡は取っていない師匠――
「俺もあんまり行きたくなかったからさ、じゃあさくさく進もうぜ」
水晶の森は魔物も出ない。
方向感覚も失ってしまい、ラスは気付いていなかったが、そこここで骸骨と化した人間の最期の姿が茂みの中から見え隠れしていた。
「コー、リロイたちが遅れてるよ、待とうよ」
「あいつらは気にしなくていい。グラース、先に行くぞ」
「私は2人と一緒に行く」
見張り役を買って出ているグラースが自分とラスのことを認めてくれていることに気付いているコハクは珍しく、ラス以外の者ににこっと笑いかけてグラースから不気味がられた。
「今の顔、気持ち悪かったぞ」
「うるせえよ。チビ、行くぞ」
長い森を抜けようとしたが、いつもならそこには強力な結界があったのに…
そこにはなくて、コハクは一瞬ふっと悲しげに笑うと、口の中で何かを唱えて指を鳴らした。
「?今何をしたの?」
「変な奴らが入って来ないようにしただけー。ほら、家が見えてきた。あれが俺の師匠の家だ」
「コーとお師匠様はあそこで2人で暮らしてたの?」
「ああ、そうだ。2人でな。…追い出されるまでは、ずっとここに居た」
…追い出された?
――コハクの顔は、無表情だった。
不安に駆られたラスは首に抱き着いて、子供をあやすように頭を撫でた。
「怖いの?」
「…まあな」
愛憎――
だがそれも魔王にはさしたる興味を抱かせず、目下今から会う師匠がラスに何を話すかが心配で、ラスの身体をぎゅっと抱きしめながらぺろぺろと頬を舐めた。
「コー、くすぐったい」
「ちなみにこの道曲がった所が“水晶の墓場”。まさに墓場って感じだぜ。行ってみるか?」
「でも…コーは行きたくないでしょ?だったら行かない。早くお師匠様の所に会いに行こうよ」
――実際問題、師匠と会うのは数百年ぶりだ。
不死になり、師匠から全ての術を学び、そして実験好きが高じて新たな魔法をも編み出したコハクは、ここから出て行った。
出て行ってからは一切連絡は取っていない師匠――
「俺もあんまり行きたくなかったからさ、じゃあさくさく進もうぜ」
水晶の森は魔物も出ない。
方向感覚も失ってしまい、ラスは気付いていなかったが、そこここで骸骨と化した人間の最期の姿が茂みの中から見え隠れしていた。
「コー、リロイたちが遅れてるよ、待とうよ」
「あいつらは気にしなくていい。グラース、先に行くぞ」
「私は2人と一緒に行く」
見張り役を買って出ているグラースが自分とラスのことを認めてくれていることに気付いているコハクは珍しく、ラス以外の者ににこっと笑いかけてグラースから不気味がられた。
「今の顔、気持ち悪かったぞ」
「うるせえよ。チビ、行くぞ」
長い森を抜けようとしたが、いつもならそこには強力な結界があったのに…
そこにはなくて、コハクは一瞬ふっと悲しげに笑うと、口の中で何かを唱えて指を鳴らした。
「?今何をしたの?」
「変な奴らが入って来ないようにしただけー。ほら、家が見えてきた。あれが俺の師匠の家だ」
「コーとお師匠様はあそこで2人で暮らしてたの?」
「ああ、そうだ。2人でな。…追い出されるまでは、ずっとここに居た」
…追い出された?
――コハクの顔は、無表情だった。
不安に駆られたラスは首に抱き着いて、子供をあやすように頭を撫でた。
「怖いの?」
「…まあな」
愛憎――