魔王と王女の物語
家の中から一部始終を見ていたローズマリーは、不機嫌全開で戻って来たコハクを横目で見ながら飲み物を口に運び、声ひとつかけなかった。
「…」
「…なんか言えよ」
「子供ね」
「うっせえ!突然チビの機嫌が悪くなったんだ。俺は何もしてねえし…なんなんだよ」
ローズマリーはのんびりとした動作で頬杖をつきながら少し考えて、そして人差し指で2階を指して、端的に告げた。
「ベッドがひとつ」
「はあ?」
「私とあなたの仲に気付いたとか」
「っ!そんな…だってそれはもう…」
「女って1度疑ったらずっと疑い続けるわよ。…私とあなたは師弟の関係を越えてた。ベッドを見てそれに気付いたのよ」
――コハクの顔色がみるみる変わった。
ラスに言おうとしていたことをすでに勘付かれ、そして離れて行こうとしているラスを取り戻すために血相を変えて飛び出して行こうとしたが、
ローズマリーの一言で、その脚はぴたりと止まった。
「説得するつもりなら真実だけを。あなたはすぐ茶化すところがあるから、今はやめておきなさい」
「…俺は…もうラスしか見えねえんだ。あいつが離れて行ったら…俺…」
途方に暮れた子供のような顔をした。
赤い瞳には恋焦がれる炎が揺れて、ローズマリーはふっと微笑むと沈痛な空気を和らげて、家を通り過ぎて庭の花畑に座った3人を窓から見て笑った。
「とにかく、ラス王女から話しかけてくるまで待ちなさい。それまでは私の雑用を手伝ってもらうわ。いいわね?」
「…わかった」
――ローズマリーとの蜜月…それはもう遥か昔のことで、あの頃は自分の世界にはローズマリーしか居なかった。
だが今は違う。
今はラスしか目に入っていないのに。
なのに――
「…こんなとこ寄るんじゃなかった」
「あなたの女関係は派手だものね、いつか気付かれることだったのよ」
「…うっせ」
室内を行ったり来たりしていたコハクは、窓からラスたちが見えると駆け寄って庭を覗き込んで、
ずっと俯いているラスに焦がれて焦がれて…胸を押さえた。
「…ラス…!」
お前だけなのに。
「…」
「…なんか言えよ」
「子供ね」
「うっせえ!突然チビの機嫌が悪くなったんだ。俺は何もしてねえし…なんなんだよ」
ローズマリーはのんびりとした動作で頬杖をつきながら少し考えて、そして人差し指で2階を指して、端的に告げた。
「ベッドがひとつ」
「はあ?」
「私とあなたの仲に気付いたとか」
「っ!そんな…だってそれはもう…」
「女って1度疑ったらずっと疑い続けるわよ。…私とあなたは師弟の関係を越えてた。ベッドを見てそれに気付いたのよ」
――コハクの顔色がみるみる変わった。
ラスに言おうとしていたことをすでに勘付かれ、そして離れて行こうとしているラスを取り戻すために血相を変えて飛び出して行こうとしたが、
ローズマリーの一言で、その脚はぴたりと止まった。
「説得するつもりなら真実だけを。あなたはすぐ茶化すところがあるから、今はやめておきなさい」
「…俺は…もうラスしか見えねえんだ。あいつが離れて行ったら…俺…」
途方に暮れた子供のような顔をした。
赤い瞳には恋焦がれる炎が揺れて、ローズマリーはふっと微笑むと沈痛な空気を和らげて、家を通り過ぎて庭の花畑に座った3人を窓から見て笑った。
「とにかく、ラス王女から話しかけてくるまで待ちなさい。それまでは私の雑用を手伝ってもらうわ。いいわね?」
「…わかった」
――ローズマリーとの蜜月…それはもう遥か昔のことで、あの頃は自分の世界にはローズマリーしか居なかった。
だが今は違う。
今はラスしか目に入っていないのに。
なのに――
「…こんなとこ寄るんじゃなかった」
「あなたの女関係は派手だものね、いつか気付かれることだったのよ」
「…うっせ」
室内を行ったり来たりしていたコハクは、窓からラスたちが見えると駆け寄って庭を覗き込んで、
ずっと俯いているラスに焦がれて焦がれて…胸を押さえた。
「…ラス…!」
お前だけなのに。