魔王と王女の物語
小さな窓からコハクとローズマリーが何か話をしているのが見えていた。
ラスは窓から目を離せなくなった。
そして視線に気付いたコハクがこちらを見てはにかんで…
ぱっと顔を逸らして陽が暮れてきだした空を見上げた。
「この家だと全員が泊まるのは無理だな。ラス…私と寝るか?」
「…いいの?邪魔じゃない?」
「お前はいつも魔王にべったりだったから、いつか一緒に寝てみたいと思ってた」
――男に言われたら卒倒しそうなセリフをさらっと言って笑いかけたグラースの膝に上り込んで抱き着き、
リロイとティアラは顔を見合わせるとラスをグラースに任せて元来た道の水晶の森を指した。
「僕とティアラ王女は少し森を見て回ってくるから…」
「うん。ティアラ、脚を治してくれてありがとう」
「…いいのよ。じゃあラス、また後でね」
旅の間に親密になっていったリロイとティアラのことが少し羨ましくて、後ろ姿を目で追っていると…家のドアが開いて中からローズマリーが出て来た。
「中へ入らない?」
「…ううん、ここに居ます」
「そう?野宿はもう嫌でしょ?ベッドを使いたくないの?」
――ベッド…
ローズマリーも、いつもコハクがしてくれるように、ぎゅっと抱きしめられて眠ったのだろうか。
…キスもされたり…子供ができるようなことも?
それはどうやればできるのか?
まさか…コハクとローズマリーの間には子供が?
「ラス、余計なことは考えなくていい」
「グラース…」
頬を軽く叩かれて我に返ると、ローズマリーは手にしていたマグカップをラスとグラースの手に無理矢理持たせた。
「グラースのはウイスキー入りのホットミルクよ、私が作ったの。ラス王女のは蜂蜜入りの紅茶。…コハクが作ったのよ」
「…これ…」
――小さな頃から今までずっと、機嫌が悪くなった時にいつも作ってくれた蜂蜜入りの紅茶。
ふいに嗚咽が漏れて、マグカップを持つ手が震え、俯くとぽたぽたと涙が零れて、それをじっと見ていたローズマリーは肩で息をついた。
「コハクの話を聞いてあげて」
想像で押し潰されないよう。
ラスは窓から目を離せなくなった。
そして視線に気付いたコハクがこちらを見てはにかんで…
ぱっと顔を逸らして陽が暮れてきだした空を見上げた。
「この家だと全員が泊まるのは無理だな。ラス…私と寝るか?」
「…いいの?邪魔じゃない?」
「お前はいつも魔王にべったりだったから、いつか一緒に寝てみたいと思ってた」
――男に言われたら卒倒しそうなセリフをさらっと言って笑いかけたグラースの膝に上り込んで抱き着き、
リロイとティアラは顔を見合わせるとラスをグラースに任せて元来た道の水晶の森を指した。
「僕とティアラ王女は少し森を見て回ってくるから…」
「うん。ティアラ、脚を治してくれてありがとう」
「…いいのよ。じゃあラス、また後でね」
旅の間に親密になっていったリロイとティアラのことが少し羨ましくて、後ろ姿を目で追っていると…家のドアが開いて中からローズマリーが出て来た。
「中へ入らない?」
「…ううん、ここに居ます」
「そう?野宿はもう嫌でしょ?ベッドを使いたくないの?」
――ベッド…
ローズマリーも、いつもコハクがしてくれるように、ぎゅっと抱きしめられて眠ったのだろうか。
…キスもされたり…子供ができるようなことも?
それはどうやればできるのか?
まさか…コハクとローズマリーの間には子供が?
「ラス、余計なことは考えなくていい」
「グラース…」
頬を軽く叩かれて我に返ると、ローズマリーは手にしていたマグカップをラスとグラースの手に無理矢理持たせた。
「グラースのはウイスキー入りのホットミルクよ、私が作ったの。ラス王女のは蜂蜜入りの紅茶。…コハクが作ったのよ」
「…これ…」
――小さな頃から今までずっと、機嫌が悪くなった時にいつも作ってくれた蜂蜜入りの紅茶。
ふいに嗚咽が漏れて、マグカップを持つ手が震え、俯くとぽたぽたと涙が零れて、それをじっと見ていたローズマリーは肩で息をついた。
「コハクの話を聞いてあげて」
想像で押し潰されないよう。