魔王と王女の物語
…夜になるといつも2階から追い出されて、こんなに長く床に伏せるローズマリーを見たことがなく、

下心無しで心配で、ようやく目が覚めたローズマリーと目が合うと、まず言い訳をした。


「心配だからここに居たんだぞ。俺、下に降りてっから」


「…お風呂に入りたいわ」


「へっ!?」


「服も血まみれのままだわ。着替えさせてくれなかったの?」


…ローズマリーは当たり前のように言ったが、着替えさせたい半面、絶対爆発する自信があったので、それだけはできなかった。


そんな思春期まっしぐらのコハクに、ローズマリーは追い打ちをかけた。


「連れて行って」


「わ、わかった」


――抱き上げたローズマリーの身体はやわらかく、軽く…

なるべく意識しないように心がけて1階のバスルームまで運ぶと、さらに要求のレベルが上がった。


「1人じゃ入れないわ。服を脱がせて」


「お、お前…そんなんさせるなよな!1人で入れないんだったら明日入れば…」


「今入りたいの。これは師匠としての命令よ」


そう言われてしまうと反抗もできず、

期待半分下心半分でローズマリーのローブに手をかけて下着も脱がせて…


はじめて女の身体を見たコハクはぎゅっと瞳を閉じて、温かい湯を張ったバスタブに入れてやると後ずさりした。


「じゃあ俺…」


「待って。…ここに居て」


「………誘ってんのか?」


「…そう感じる?だったらそうなんじゃないかしら」


――恋だの愛だの正直よくわからない。

わからないが、ローズマリーはいつも自分の心の中心に居て、いつもいつも“触れたい”と思っていた。


「…俺も入っていっか?」


「いいけど狭いわよ。………あなたにはもう教えることがなくなったの。だから最後に…1番大切なことを教えてあげる」


背は小さいのにグラマラスなローズマリー。

“1番大切なこと”の意味を悟ったコハクは、焦りながら服を脱いだ。


「俺と…関係を結んでもいいんだな?」


「もうそれしか教えてやれないの。後は出て行くなりここに残るなり好きにすればいいわ」


――ローズマリーを抱く時が来た。
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