魔王と王女の物語
「身体の関係ってどんなこと?」


付き合いたての恋人同士のようにしばらく2人でもじもじした後ラスがそう切り出して、

一体どう言えば伝わるのだろうかと必死に考えた結果、ずっとラスを抱きしめていたコハクは、ドレスの背中側についているファスナーをゆっくりと下げた。


「そりゃあ…これ脱がして…えーと…まずああして、こうするだろ?いやいや待てよ、最初にこれして…待て待てやっぱあれが先か?やべえ!やりたいことがありすぎる!」


「全然言ってる意味わかんない。でもこれ脱ぐって…裸になるの?赤ちゃんができるようなことなんでしょ?…コーとお師匠様の間には…」


「はあ?お前なにわけわかんねえ想像してんだよ。ガキなんか居るわけねえだろ」


ここがローズマリーの庭なことを思い出したコハクはかなりコーフンしかけていたのだが、

またファスナーを上げるとラスを抱っこして、水晶の森の奥を指した。


「俺が捨てられたとこ…見に行くか?もう随分行ってねえけど、チビに見てもらいたいんだ」


「うん。一緒に行く。連れて行って」


「“一緒に行く”とか…マジお前やべえ!あいつら置いて2人で俺の城に行こうぜ。ひとっ飛びだぞ」


「でももうすぐなんでしょ?みんな一緒の方がいいよ。コーのお嫁さんになるとこ見てもらいたいし……やだ私…なに言ってるんだろ」


――色ぼけ魔王の頭の中はこの時超原色のピンクで染まっていて、

必死になって表情を引き締めながら何度もラスの頬に頬ずりをして森に入り、

くねくねと曲がった道を歩き、いちだんと仄暗い場所に着くとラスがぞくっと身体を震わせたので背中を擦ってやりながら自分が捨てられていた位置に座り込んだ。


水晶が燦然と輝く。


「俺そのものが水晶なんだ。だから俺は魔法を使える。チビ…俺が怖くないか?人間って呼べる生き物じゃないかもなんだぞ?」


「怖くないよ。そう言われるとコーの瞳の色って赤いけどきらきらしてるし水晶みたいだよね。だからコーは綺麗なんだね」


――よくよく見ると、とても綺麗な男だ。

真っ直ぐ見つめてくるコハクの顔を見てしまい、恥ずかしくなって俯いた。


ひとつになりたい。


そう思った。
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