魔王と王女の物語
…嬉しくて眠れるわけがない。

1番言いたかったローズマリーとの過去を受け入れてもらえた。

――ローズマリーの家を飛び出てからの自分は各地を転々として、幼い頃からずっと胸に空いていた穴の正体が何なのかわからなくて、


それを埋めるために、必死に何かを探し求めていたのだ。


…だから見つからなくて、何度も死にたいと思ったことがあるが、様々な手段を使って死んでみようと思ったのだが、死ねなかった。


「…ラス…お前だったんだな」


明け方になり、一睡もしなかったコハクがただ一心に見つめていたのは、ラスの寝顔。


カイに倒された時は遊び半分で“お前の娘に憑いてやる”と言って、

そしてラスが生まれてからは、調子が狂わされっぱなし。


「このやろ、俺が必死に我慢してんのに幸せそうに寝やがって」


「うぅん…、コー…?もう朝なの…?」


「もう朝だぜ。俺風呂入って来るし。チビと一緒がいいなー、なんてな」


冗談を言いながら立ち上がると…ラスがむくっと起きて、眠たそうな顔で何故か万歳ポーズをしていた。


「チビ?」


「私も入るから脱がせて」


「!!ま、マジでか!よ、よしわかった!いっくぞー」


頭からすぽっとネグリジェを脱がせて魔王、鼻血寸前。


「お湯かぶったら目が覚めるよね?」


「だいじょぶだいじょぶ、俺が目ぇ覚めるようなことしてやっから」


ラスの身体に目が釘付けな魔王は姫抱っこをして理性を総動員させつついそいそとバスルームに向かっていると…


「あら、朝からお盛んねえ」


「!じゃ、邪魔すんなよなっ」


「しないわよ。終わったら声をかけてね」


「終わったらって…何が?」


「ち、チビは気にしなくっていいの!」


下心全開の魔王の思惑はローズマリーにだだ漏れで、シャワーの下まで連れて行くと一瞬で服を脱ぎつつ蛇口を捻った。


「わあ、気持ちいい。ね、コー」


「ん。チビ…俺もう限界」


「え?ん…」


――顔を上げた途端、キスをされた。

まるで王子様のキスで眠りから覚めたお姫様のようで、羽交い絞めにされながらのキスに、

喜びを感じた。
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