魔王と王女の物語
「ああ、本当に呪いが…!」
――ゴールドストーン王国から起った勇者カイの元に生まれた娘の影からくつくつと笑う低い声が聴こえた。
『俺があれ如きで死んだと思ったか?俺は死なないんだよ、また復活して…お前を殺してやる』
腕に抱いた娘から聴こえる邪悪な声に、
妻でありゴールドストーン王国の王女だったソフィーは卒倒し、気絶した。
…まだ目も見えない可愛いラス…
コハクを倒したばかりに娘は呪われてしまい、
力無く玉座から崩れ落ちてラスを抱きしめるカイの耳にまた例のくつくつ笑いが聴こえる。
『俺を倒したつもりだろうが、そうはいかない。呪いは解けないぞ、影は一生切り離すことはできないからな』
「貴様…!」
ラスの影に向かって剣を突き立てたが、何の効果もなく、
カイは…うなだれながら、
コハクに条件を持ち掛けた。
「頼む、娘だけはやめてくれ。復活したら俺は殺されてもいい。だから…」
『その冗談は面白くないな。見ろよこの子の白い肌にグリーンの瞳に金の髪!絶対に美女になるぞ、俺の花嫁に相応しい美女にな…』
雪のような白い肌に、
天使のような綺麗な顔立ちに、
人魚のようにしなやかな身体の絶世の美女になる予定のラス――
『あと十何年も待たなきゃいけないのか…。まあ俺もまだ傷が癒えてないしちょうどいい。カイ…お前を散々困らせてやるからな』
「コハク…!」
――胸に剣を突き刺しても笑みを絶やさなかったコハク。
あれは終わりではなく、
はじまりだったのだ――