魔王と王女の物語
グリーンリバーの王
魔王の城に最も近いのはイエローストーン王国だったが、かなり近い位置に旧グリーンストーン王国も存在した。
ただ、領主が何者であるか明らかにされておらず、聖石もおよそ100年以上前に“紛失した”と報告して以来、沈黙を守っていた。
だがブルーストーン王国とは違って人の出入りは自由で、
“知り合いがグリーンリバーに行ったきり戻って来ない”という声が後を絶たない謎の街だ。
「後戻りするなら最初から寄っておけばよかったのよ」
ティアラの調子が戻って来て苦言された魔王は、さも嫌味たっぷりににやりと笑いながら言い返した。
「グリーンリバーにゃ石がねえから興味がねえんじゃないかと思ってさ。でもチビが行きたいっていうし、文句あっか?」
先程リロイも同意していたので異存はなかったが、それにしても…
魔王がやけにうきうきしていて、不気味だった。
「グリーンリヴァーも謎の街なんだよね?コーはよく知ってるの?」
「んー?まあな。絶対ぜーったい、チビも驚くぜ」
子供のように浮かれているコハクもまた珍しく、なんだかラスも嬉しくなって遠ざかって行くコハクの城の方角を窓から眺めた。
「ねえティアラ、私ね…お嫁さんになるの」
「…ええ、知ってるわ。ラス…本気なの?」
口出しをするかと思ったコハクはずっと黙っていて、ラスのために水筒から温かいお茶を入れてやっていた。
「結婚式には来てくれるでしょ?いつになるかわからないけど、来てほしいの」
「…そうね。その時はぜひ招待してね」
「うんっ」
――幸せそうに見えた。
コハクは性格こそ超がつくほど悪いが、ラスに対しては真摯な愛で、真綿に包み込むようにして大切にしているのがよくわかる。
…けれど、リロイの魔法剣は魔王の城に着いたらこのラスの最愛の男の胸を――
「おい、俺の顔ばっか見てんじゃねえぞ。処女じゃねえお前にゃもう興味ねえんだよ」
「?コー、どういう意味?」
「べっつにー。なあチビ、すっげえ綺麗なウェディングドレス用意してやるからな、楽しみにしとけよ」
「うんっ!コー大好き!」
ようやくの、両想い。
ただ、領主が何者であるか明らかにされておらず、聖石もおよそ100年以上前に“紛失した”と報告して以来、沈黙を守っていた。
だがブルーストーン王国とは違って人の出入りは自由で、
“知り合いがグリーンリバーに行ったきり戻って来ない”という声が後を絶たない謎の街だ。
「後戻りするなら最初から寄っておけばよかったのよ」
ティアラの調子が戻って来て苦言された魔王は、さも嫌味たっぷりににやりと笑いながら言い返した。
「グリーンリバーにゃ石がねえから興味がねえんじゃないかと思ってさ。でもチビが行きたいっていうし、文句あっか?」
先程リロイも同意していたので異存はなかったが、それにしても…
魔王がやけにうきうきしていて、不気味だった。
「グリーンリヴァーも謎の街なんだよね?コーはよく知ってるの?」
「んー?まあな。絶対ぜーったい、チビも驚くぜ」
子供のように浮かれているコハクもまた珍しく、なんだかラスも嬉しくなって遠ざかって行くコハクの城の方角を窓から眺めた。
「ねえティアラ、私ね…お嫁さんになるの」
「…ええ、知ってるわ。ラス…本気なの?」
口出しをするかと思ったコハクはずっと黙っていて、ラスのために水筒から温かいお茶を入れてやっていた。
「結婚式には来てくれるでしょ?いつになるかわからないけど、来てほしいの」
「…そうね。その時はぜひ招待してね」
「うんっ」
――幸せそうに見えた。
コハクは性格こそ超がつくほど悪いが、ラスに対しては真摯な愛で、真綿に包み込むようにして大切にしているのがよくわかる。
…けれど、リロイの魔法剣は魔王の城に着いたらこのラスの最愛の男の胸を――
「おい、俺の顔ばっか見てんじゃねえぞ。処女じゃねえお前にゃもう興味ねえんだよ」
「?コー、どういう意味?」
「べっつにー。なあチビ、すっげえ綺麗なウェディングドレス用意してやるからな、楽しみにしとけよ」
「うんっ!コー大好き!」
ようやくの、両想い。