魔王と王女の物語
コハクは特製のキノコのスープを作るとそれを食べないまま絨毯の上で寝転がっていた。


「コー、起きて。出発しようよ」


眠たいのか生返事を返して起きないコハクをどうやって起こそうかと考えた挙句…


少しヒールの高い靴を履くと、少し強めにコハクの腹を踏んづけた。


「ぐえっ!」


「起きないともっと踏むよ。コー、出発だってば!」


「チビっ、もっと踏ん………やべえ、開けてはならない禁断の扉を開きかけたぜ…」


ヘンタイが前面に出てしまいそうになった魔王はむくりと起き上がるとラスの額にちゅっとキスをして立ち上がり、

すでに白馬に騎乗したリロイを横目に見ながら馬車に乗り込み、談笑するティアラとラスを眺めながらまた寝転んだ。


「あのね、ティアラとリロイが結婚したら私とコーが仲人になろうねって話をしてたの。あ、そうだ、一緒に結婚式する?」


「え…、ら、ラス、私とリロイは別に…」


「リロイは小さな頃から傍に居てくれたから少しやきもち妬いちゃうけど…でもリロイとティアラはお似合いだと思うの」


自身の現在の心境と今後の明るい展望を必死に伝えてこようとしているラスの気持ちがとても嬉しくて、

ただどこまでもすれ違うラスとリロイの想いが切なくて――


ティアラは曖昧に頷くと、ラスの肩にもたれかかった。


「ありがとうラス。私…リロイの1番になりたいわ。…応援してくれる?」


「うんっ。あのね、本当は最初はリロイが私の“勇者様”かなって思ってたの。でも違ったの。コーが私の“勇者様”なんだよ。ね、コー」


「ん?んー、まあ当たり前だろ」


…とか言いつつコハクの顔はほんのり赤くなっていた。

ラスが首を傾けて顔を近付けると、両手で頬をむにっと挟んで変顔を作るとティアラの隣からラスを攫ってマントの中に抱き込んだ。


「気合い入れて落としにかかれよ。お前のその身体と気持ちがあれば大丈夫だ。自信を持てよ」


「…お前に応援されてもちっとも嬉しくないのはどうして?」


「ふふふっ」


2人から笑い声が漏れた。


「それよかチビ、さっきのは効いたぜ。後でもう1度俺を踏ん…」


ヘンタイまっしぐら。
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