魔王と王女の物語
そのうち馬車の中でも息が白くなる位寒くなってきた。
数百年もの間ずっとあの針山の上の城で独りで生きてきた魔王は花嫁を連れて凱旋してきたのだ。
「ふふふふふ」
「コー、気持ち悪い」
「だってさあ…チビが俺の嫁さんだぜ?そんなの絶対永遠に無理だと思ってたのに…」
――至極真面目なことを口にしたコハクはラスの身体が冷えないように影に手を突っ込んでコートを取り出すと頭から被せた。
「独りじゃないでしょ?コーの回りにはオーディンさんや魔物さんたちが居たでしょ?」
「居たっつーか…対外的にはそうだけど、心の拠り所っつーのは居なかったけどな」
赤い瞳が自嘲的に揺らぎ、この男の花嫁となることを決めたラスは膝に乗っかると可愛らしく頬にキスをした。
「んおっ!?」
「あのねコー…お父様たちとも仲良くしてほしいけど、私の傍にずっと居てくれたのはコーなの。今まで気づかなくてごめんね、私…コーのこと、すっごく好きみたいなの…」
…
……魔王、臨界点突破まであと3秒。
「ち、チビっ」
「恥ずかしいっ!」
顔を真っ赤にしたラスにきゅんが止まらない魔王は、もう目の前と言っても過言ではない針山を窓から見上げながらラスを羽交い絞めにした。
「コー、痛いってば」
「かーわいいこと言いやがって。チビはチビだからいいの!あと、今すっげえ嬉しいから魔法を見せてやんよ」
――コハクが御者台から前方のリロイたちに声をかけて馬を止めさせると、横殴りの風が吹き荒れる空を見上げて指をひゅっと振った。
すると風が止まり、リロイたちを馬車に押し込めると押し合いへし合いになりながら、今度は指をぱちんと鳴らした。
「きゃあっ!」
「ば、馬車が…浮いた!?」
先導するのは馬車を引いている2頭の馬。
スロープを駆け上がるように空を走り、一路魔王の城へと向かう様はラスを大興奮させた。
「すごいっ!コー、すごいね!」
「ふふふふ、すげえだろ!楽しいだろ!俺ってかっこいいだろ!」
…最後の台詞は余計だったが、魔王の扱いに慣れてきたラスは頭を撫でてやり、さらに有頂天にさせた。
数百年もの間ずっとあの針山の上の城で独りで生きてきた魔王は花嫁を連れて凱旋してきたのだ。
「ふふふふふ」
「コー、気持ち悪い」
「だってさあ…チビが俺の嫁さんだぜ?そんなの絶対永遠に無理だと思ってたのに…」
――至極真面目なことを口にしたコハクはラスの身体が冷えないように影に手を突っ込んでコートを取り出すと頭から被せた。
「独りじゃないでしょ?コーの回りにはオーディンさんや魔物さんたちが居たでしょ?」
「居たっつーか…対外的にはそうだけど、心の拠り所っつーのは居なかったけどな」
赤い瞳が自嘲的に揺らぎ、この男の花嫁となることを決めたラスは膝に乗っかると可愛らしく頬にキスをした。
「んおっ!?」
「あのねコー…お父様たちとも仲良くしてほしいけど、私の傍にずっと居てくれたのはコーなの。今まで気づかなくてごめんね、私…コーのこと、すっごく好きみたいなの…」
…
……魔王、臨界点突破まであと3秒。
「ち、チビっ」
「恥ずかしいっ!」
顔を真っ赤にしたラスにきゅんが止まらない魔王は、もう目の前と言っても過言ではない針山を窓から見上げながらラスを羽交い絞めにした。
「コー、痛いってば」
「かーわいいこと言いやがって。チビはチビだからいいの!あと、今すっげえ嬉しいから魔法を見せてやんよ」
――コハクが御者台から前方のリロイたちに声をかけて馬を止めさせると、横殴りの風が吹き荒れる空を見上げて指をひゅっと振った。
すると風が止まり、リロイたちを馬車に押し込めると押し合いへし合いになりながら、今度は指をぱちんと鳴らした。
「きゃあっ!」
「ば、馬車が…浮いた!?」
先導するのは馬車を引いている2頭の馬。
スロープを駆け上がるように空を走り、一路魔王の城へと向かう様はラスを大興奮させた。
「すごいっ!コー、すごいね!」
「ふふふふ、すげえだろ!楽しいだろ!俺ってかっこいいだろ!」
…最後の台詞は余計だったが、魔王の扱いに慣れてきたラスは頭を撫でてやり、さらに有頂天にさせた。