魔王と王女の物語
最北端の魔王の城のある地は魔物がうようよ徘徊していた。
だがコハクの存在と魔法のおかげで襲撃されることなく城に着いたラスたちは、
城に向かって一直線に伸びている道と両サイドにある花壇と回りの光景のギャップに少し驚いていた。
「外はすごく荒れてるけど…城と城の回りは綺麗なのね」
「ああ、オーディンに綺麗にしとくように言っといたからな。お、来たぞ」
「コハク様ーー!」
城の正門から飛び出てきたのは今まで行方知れずだったベルルで、
この黒妖精をどうしても手に乗っけたいラスが瞳を輝かせながら水を掬うようにして両手を差し出すと…それを見事に無視された。
「ちゃんと色々やっといたか?」
「ええもちろん!棺はぜんっぜん開かないし、魔物を使って掃除もさせました!グリーンリバーから魔物のコックも呼び寄せました!コハク様…いよいよですね!」
ひしっとコハクの首に抱き着いて耳にキスをしているベルルに嫉妬心が燃え上がったラスは、コハクのマントを思いきり引っ張った。
「チビ?」
「コー、早く!私寒いの苦手なんだから」
「知ってるって。さ、行くか」
コハクが一歩足を踏み出すと、主の帰還を歓迎するかのように観音開きの重厚で重たい門が音を立てて開いた。
――ラスは風になぶられる金の髪を押さえながら城を見上げた。
細長い建物の群はそれぞれ渡り廊下で繋がっており、無機質な印象を受けた。
ここにコハクの本体が。
コハクの本体が眠っている棺を自分が開ければ…コハクは影から居なくなる。
「…やだ」
「ん?今なんか言ったか?」
脚が止まり、俯いたラスがか細く震える声を上げると、先頭を行っていたコハクが引き返してきてラスを抱っこした。
…今にも泣きそうな表情に驚き、動揺していると…
「コーが私の影から居なくなるなんてやだ!やっぱり駄目!」
「え…」
無我夢中でもがいてコハクの腕の中から降りると建物の中へと走り込んでしまった。
「私が…」
「や、俺が行く」
グラースの肩を押してその場に引き留めると、コハクはラスを追って城の中へと入って行った。
だがコハクの存在と魔法のおかげで襲撃されることなく城に着いたラスたちは、
城に向かって一直線に伸びている道と両サイドにある花壇と回りの光景のギャップに少し驚いていた。
「外はすごく荒れてるけど…城と城の回りは綺麗なのね」
「ああ、オーディンに綺麗にしとくように言っといたからな。お、来たぞ」
「コハク様ーー!」
城の正門から飛び出てきたのは今まで行方知れずだったベルルで、
この黒妖精をどうしても手に乗っけたいラスが瞳を輝かせながら水を掬うようにして両手を差し出すと…それを見事に無視された。
「ちゃんと色々やっといたか?」
「ええもちろん!棺はぜんっぜん開かないし、魔物を使って掃除もさせました!グリーンリバーから魔物のコックも呼び寄せました!コハク様…いよいよですね!」
ひしっとコハクの首に抱き着いて耳にキスをしているベルルに嫉妬心が燃え上がったラスは、コハクのマントを思いきり引っ張った。
「チビ?」
「コー、早く!私寒いの苦手なんだから」
「知ってるって。さ、行くか」
コハクが一歩足を踏み出すと、主の帰還を歓迎するかのように観音開きの重厚で重たい門が音を立てて開いた。
――ラスは風になぶられる金の髪を押さえながら城を見上げた。
細長い建物の群はそれぞれ渡り廊下で繋がっており、無機質な印象を受けた。
ここにコハクの本体が。
コハクの本体が眠っている棺を自分が開ければ…コハクは影から居なくなる。
「…やだ」
「ん?今なんか言ったか?」
脚が止まり、俯いたラスがか細く震える声を上げると、先頭を行っていたコハクが引き返してきてラスを抱っこした。
…今にも泣きそうな表情に驚き、動揺していると…
「コーが私の影から居なくなるなんてやだ!やっぱり駄目!」
「え…」
無我夢中でもがいてコハクの腕の中から降りると建物の中へと走り込んでしまった。
「私が…」
「や、俺が行く」
グラースの肩を押してその場に引き留めると、コハクはラスを追って城の中へと入って行った。