魔王と王女の物語
リロイの剣のスタイルはよく知っている。
ラスが小さな頃から彼が白騎士団の隊長となるべく毎日必死に練習している光景を見てきたのだから。
大人になるにつれて会う回数は減っていたが、ラスへの想いは逆に募っていったのだろう。
…自分を倒すために水晶に魂を売ろうとした男――
――リロイは魔法剣を正眼に構えると1度大きく深呼吸をして、走り込んできた。
「影、覚悟!」
「…お前だけは俺を“影”って言い続けてきたよな」
コハクは襲い掛かってくるリロイに対して相変らず無防備とも言えるべく両腕をだらりと下げていた。
あの魔法剣に刺された時のことを今でも覚えている。
カイに呪いをかけた後、それ以上この身体を傷つけようとはしなかった。
腕や頭などを落とせば再生にはもっと時間がかかったかもしれないのに――
慈悲だったのか、止めを刺したと思ったか…
焼けつくような痛みは、カイが凱旋帰国した後ソフィーと結婚して子供が…
ラスを身籠るまで、ずっと続いたのだ。
ラスがソフィーの子宮に着床した瞬間呪いは発動し、自分はラスの影になったのだから。
「影!よそ見をするな!」
「してねえよ。つか気が乱れてんぞ、そんなんで俺を殺せるとでも思ってんのか?」
「うるさい!お前を倒して僕は…っ」
――まるで自身に呪いをかけるようにして、日々を過ごしてきたリロイ。
勇者としての素質を兼ね備え、もし敗けるようなことがあれば、この男がラスと…結婚するのだろう。
それだけは、絶対にいやだ。
「チビ、いやなら出てろって」
頭上から神速の如く振り下ろされてきた魔法剣を身を翻して避けると、視界の端でラスが両手で口を覆っている姿が見えた。
顔面蒼白になりながらも、目を離さない。
…リロイではなく、自分を見てくれている。
それがとても嬉しくてちょっとやる気になったコハクはステップを踏むようにして2,3歩後方に下がると、胸に手をあてた。
「お前が白騎士なら俺は黒騎士ってとこだな」
コハクの胸から、黒い剣が現れた。
「剣で葬ってやる」
騎士らしく――
ラスが小さな頃から彼が白騎士団の隊長となるべく毎日必死に練習している光景を見てきたのだから。
大人になるにつれて会う回数は減っていたが、ラスへの想いは逆に募っていったのだろう。
…自分を倒すために水晶に魂を売ろうとした男――
――リロイは魔法剣を正眼に構えると1度大きく深呼吸をして、走り込んできた。
「影、覚悟!」
「…お前だけは俺を“影”って言い続けてきたよな」
コハクは襲い掛かってくるリロイに対して相変らず無防備とも言えるべく両腕をだらりと下げていた。
あの魔法剣に刺された時のことを今でも覚えている。
カイに呪いをかけた後、それ以上この身体を傷つけようとはしなかった。
腕や頭などを落とせば再生にはもっと時間がかかったかもしれないのに――
慈悲だったのか、止めを刺したと思ったか…
焼けつくような痛みは、カイが凱旋帰国した後ソフィーと結婚して子供が…
ラスを身籠るまで、ずっと続いたのだ。
ラスがソフィーの子宮に着床した瞬間呪いは発動し、自分はラスの影になったのだから。
「影!よそ見をするな!」
「してねえよ。つか気が乱れてんぞ、そんなんで俺を殺せるとでも思ってんのか?」
「うるさい!お前を倒して僕は…っ」
――まるで自身に呪いをかけるようにして、日々を過ごしてきたリロイ。
勇者としての素質を兼ね備え、もし敗けるようなことがあれば、この男がラスと…結婚するのだろう。
それだけは、絶対にいやだ。
「チビ、いやなら出てろって」
頭上から神速の如く振り下ろされてきた魔法剣を身を翻して避けると、視界の端でラスが両手で口を覆っている姿が見えた。
顔面蒼白になりながらも、目を離さない。
…リロイではなく、自分を見てくれている。
それがとても嬉しくてちょっとやる気になったコハクはステップを踏むようにして2,3歩後方に下がると、胸に手をあてた。
「お前が白騎士なら俺は黒騎士ってとこだな」
コハクの胸から、黒い剣が現れた。
「剣で葬ってやる」
騎士らしく――