魔王と王女の物語
「グラース、どうしよう…私、居ても立っても…」
グラースのマントを握っている手は力がこもりすぎて真っ白になっていた。
ティアラは何かが乗り移ったかのようにして歌い続ける。
コハクとリロイは…剣戟の音を響かせながらどこまでも天井が高いアーチ上の部屋を縦横無尽に駆けていた。
――そしてラスは…
部屋の1番奥にあるものの存在に、気が付いた。
「あれって…」
10段ほどの階段があり、その上には祭壇のような場所が。
だがそこにあるのは、真っ黒な棺だった。
そしてその前には大きくなったベルルが覆い被さるようにして棺を抱いて守っている。
「あの中に…コーの本体が…」
この城に着いたら自分に何かしてほしい、と言っていたコハク――
なんとなくその意味がわかり、ラスの脚はふらふらと棺に向かって歩き出した。
「ラス、危険だ」
「あそこに行きたいの…。グラース、私…あそこに行かなきゃ」
1歩1歩前に進みながら、怖いけれど目の端で戦う2人を捉えた。
リロイの左頬は大きく裂け、
コハクのマントはびりびりになり、まさにマントを宙に放って脱ぎ捨てたところだった。
「チビ―、どこ行くんだ?」
「コー、あの中にコーの身体があるんでしょっ!?」
「そうだ。チビ、あの棺はお前しか開けられねえ。ちょっと待ってろって、すぐ終わるから」
「うん…わかった…」
返事をしながらがくがくと震える脚を叱咤して階段の前にたどり着くと、ベルルが瞳を尖らせて激しく見下ろしてきた。
「あんたのせいでこんなことになったんだからね!」
「…ごめんなさい…ごめんなさい…!」
「ベルル!ふざけんなよてめえ!なんでチビを責めてんだよ、その羽むしるぞ!」
しゃがみこんでしまったラスを守るようにグラースが背後から肩を抱いてやり、背中を擦ってやった。
「お前のせいじゃない。チビ、そこに座ってろ。動くなよ」
ベルルが綺麗な顔をくしゃくしゃにして泣き声を上げた。
「コハク様の馬鹿ぁ!コハク様…大好き!早く完全体になって!」
それぞれの、愛の叫び。
グラースのマントを握っている手は力がこもりすぎて真っ白になっていた。
ティアラは何かが乗り移ったかのようにして歌い続ける。
コハクとリロイは…剣戟の音を響かせながらどこまでも天井が高いアーチ上の部屋を縦横無尽に駆けていた。
――そしてラスは…
部屋の1番奥にあるものの存在に、気が付いた。
「あれって…」
10段ほどの階段があり、その上には祭壇のような場所が。
だがそこにあるのは、真っ黒な棺だった。
そしてその前には大きくなったベルルが覆い被さるようにして棺を抱いて守っている。
「あの中に…コーの本体が…」
この城に着いたら自分に何かしてほしい、と言っていたコハク――
なんとなくその意味がわかり、ラスの脚はふらふらと棺に向かって歩き出した。
「ラス、危険だ」
「あそこに行きたいの…。グラース、私…あそこに行かなきゃ」
1歩1歩前に進みながら、怖いけれど目の端で戦う2人を捉えた。
リロイの左頬は大きく裂け、
コハクのマントはびりびりになり、まさにマントを宙に放って脱ぎ捨てたところだった。
「チビ―、どこ行くんだ?」
「コー、あの中にコーの身体があるんでしょっ!?」
「そうだ。チビ、あの棺はお前しか開けられねえ。ちょっと待ってろって、すぐ終わるから」
「うん…わかった…」
返事をしながらがくがくと震える脚を叱咤して階段の前にたどり着くと、ベルルが瞳を尖らせて激しく見下ろしてきた。
「あんたのせいでこんなことになったんだからね!」
「…ごめんなさい…ごめんなさい…!」
「ベルル!ふざけんなよてめえ!なんでチビを責めてんだよ、その羽むしるぞ!」
しゃがみこんでしまったラスを守るようにグラースが背後から肩を抱いてやり、背中を擦ってやった。
「お前のせいじゃない。チビ、そこに座ってろ。動くなよ」
ベルルが綺麗な顔をくしゃくしゃにして泣き声を上げた。
「コハク様の馬鹿ぁ!コハク様…大好き!早く完全体になって!」
それぞれの、愛の叫び。