魔王と王女の物語
リロイの魔法剣は切っ先だけだったとしても、ラスの身体を数センチ貫いていた。
コハクの手によって横たえさせられると、ずきずきと痛む胸に視線を遣ったラスは震える息を吐いた。
「チビ、大丈夫だからな!俺がすぐ治してやる!」
「コー…痛いよ…痛いけど…コー、良かった…」
無我夢中だった。
あんなにも早く自分が走れるのだと知ったし、コハクとリロイの戦いを止めることができたのだから…
こんな傷は序の口。
もうこれ以上は、心が耐えられない。
「馬鹿が…!お前が死んでしまったら俺は…っ」
震える声が降ってきて顔を横に向けると、
コハクが出血し続ける自分の胸を圧迫しながら今にも泣きそうな顔をしていた。
「コー…私は大丈夫だから…そんな顔しないで」
「だって…!チビ、俺はもう…駄目かと思った…!」
あの時背後からコハクが強く腰を抱いて引かなければ、死んでいたかもしれない。
だけどコハクが殺されてしまったならば…
自分だって死んだようなものだ。
がたがたと身体を震わせるコハクはまるで子供のようで、
本当に本当に、コハクに大切にされてここまで生きて来たことを強く感じたラスは真っ青になって言葉の出ないリロイをじっと見つめた。
「リロイ…ごめんね、コーは私の宝物だから…。コーが居ないと生きていけないの。…それでもいい?コーを殺して、私も…殺したい?」
「違う…、違うよラス…!僕は君を殺そうなんて…!」
「でも同じことなの。コーが居ないと私は空っぽになっちゃうの。いた…っ」
胸を押さえるコハクの手は終始震えていて、その手を握りながらラスが必死に訴えると…
リロイの金の瞳から、ぽとりと涙が零れた。
「リロイ…」
「君が居ない世界なんて…僕には耐えられないよ…!」
「私も。私もコーとリロイが居ない世界なんて耐えられないの。仲良くしなくっていいからお願い…もう戦わないで…」
――リロイが両手で顔を覆って壁に身体を預けた。
嗚咽が漏れる。
ラスはもう、戻らない。
コハクの手によって横たえさせられると、ずきずきと痛む胸に視線を遣ったラスは震える息を吐いた。
「チビ、大丈夫だからな!俺がすぐ治してやる!」
「コー…痛いよ…痛いけど…コー、良かった…」
無我夢中だった。
あんなにも早く自分が走れるのだと知ったし、コハクとリロイの戦いを止めることができたのだから…
こんな傷は序の口。
もうこれ以上は、心が耐えられない。
「馬鹿が…!お前が死んでしまったら俺は…っ」
震える声が降ってきて顔を横に向けると、
コハクが出血し続ける自分の胸を圧迫しながら今にも泣きそうな顔をしていた。
「コー…私は大丈夫だから…そんな顔しないで」
「だって…!チビ、俺はもう…駄目かと思った…!」
あの時背後からコハクが強く腰を抱いて引かなければ、死んでいたかもしれない。
だけどコハクが殺されてしまったならば…
自分だって死んだようなものだ。
がたがたと身体を震わせるコハクはまるで子供のようで、
本当に本当に、コハクに大切にされてここまで生きて来たことを強く感じたラスは真っ青になって言葉の出ないリロイをじっと見つめた。
「リロイ…ごめんね、コーは私の宝物だから…。コーが居ないと生きていけないの。…それでもいい?コーを殺して、私も…殺したい?」
「違う…、違うよラス…!僕は君を殺そうなんて…!」
「でも同じことなの。コーが居ないと私は空っぽになっちゃうの。いた…っ」
胸を押さえるコハクの手は終始震えていて、その手を握りながらラスが必死に訴えると…
リロイの金の瞳から、ぽとりと涙が零れた。
「リロイ…」
「君が居ない世界なんて…僕には耐えられないよ…!」
「私も。私もコーとリロイが居ない世界なんて耐えられないの。仲良くしなくっていいからお願い…もう戦わないで…」
――リロイが両手で顔を覆って壁に身体を預けた。
嗚咽が漏れる。
ラスはもう、戻らない。