魔王と王女の物語
ラスの傷は完全に塞がったが、一気に出血したせいで貧血を起こしたラスが…気を失った。
ラスの手前上今まで大人しくしていたコハクがゆらりと立ち上がると、未だに両手で顔を覆って俯くリロイの前に立った。
「てめえ…」
「魔王、やめて!リロイ!リロイ!!」
今度はティアラがコハクの前に立ち塞がると、真っ赤な瞳をさらに鮮やかな赤に染めているコハクをきっと睨みつけた。
「リロイを殺すならまずは私を!私だってリロイが居ないと生きていけない!」
「……お前はフィリアにそっくりだな」
「…え?」
「…小僧…早くここから出て行け。でないと本気でお前を殺す。カイに伝えろ。チビはもう戻らねえと」
「…お前はラスを幸せにできるのか…?」
声は悲しみに震え、憎悪に歪んでいたが…
ありとあらゆる覚悟をしてきたのはこちらも同じだ。
さっきまでは、死んでもいいと思っていたのだから。
ラスが幼い頃によく自分を庇ってくれていた時のようにまた庇ってくれたことが、とても嬉しかった。
あの小さくて可愛い王女は時にものすごく強くなって、コハクを驚かせ続ける唯一の存在だ。
「俺にしかチビは幸せにできねえ。言ったろ、チビの魂はもう俺に縛られているんだ。…俺の魂も」
「…」
――コハクは棺に目を遣り、ラスを抱き上げた。
「ベルル、そこ見張ってろよ。小僧が悪さしようとしたら呪い殺してやれ」
「コハク様、王女を起こして棺を開けてもらえばいいでしょ!?あたしが起こして…」
「あーっ、駄目駄目!チビに触んな!…俺が連れてくから」
ティアラの魔法によって指が落ちそうになっていたコハクの手は綺麗に元通りになっていた。
その手を見つめながらリロイに攻撃するのではと片時も自分から目を離さないティアラにすれ違いざま小さく呟いた。
「ありがとな」
「…気持ち悪いわ、やめて」
素っ気なく返されて肩を竦めると、顔面蒼白のラスを抱き上げて額にキスをした。
「…ひやっとさせんなよな」
いつもいつも自分を驚かせるラス。
これからも、ずっとずっと――
ラスの手前上今まで大人しくしていたコハクがゆらりと立ち上がると、未だに両手で顔を覆って俯くリロイの前に立った。
「てめえ…」
「魔王、やめて!リロイ!リロイ!!」
今度はティアラがコハクの前に立ち塞がると、真っ赤な瞳をさらに鮮やかな赤に染めているコハクをきっと睨みつけた。
「リロイを殺すならまずは私を!私だってリロイが居ないと生きていけない!」
「……お前はフィリアにそっくりだな」
「…え?」
「…小僧…早くここから出て行け。でないと本気でお前を殺す。カイに伝えろ。チビはもう戻らねえと」
「…お前はラスを幸せにできるのか…?」
声は悲しみに震え、憎悪に歪んでいたが…
ありとあらゆる覚悟をしてきたのはこちらも同じだ。
さっきまでは、死んでもいいと思っていたのだから。
ラスが幼い頃によく自分を庇ってくれていた時のようにまた庇ってくれたことが、とても嬉しかった。
あの小さくて可愛い王女は時にものすごく強くなって、コハクを驚かせ続ける唯一の存在だ。
「俺にしかチビは幸せにできねえ。言ったろ、チビの魂はもう俺に縛られているんだ。…俺の魂も」
「…」
――コハクは棺に目を遣り、ラスを抱き上げた。
「ベルル、そこ見張ってろよ。小僧が悪さしようとしたら呪い殺してやれ」
「コハク様、王女を起こして棺を開けてもらえばいいでしょ!?あたしが起こして…」
「あーっ、駄目駄目!チビに触んな!…俺が連れてくから」
ティアラの魔法によって指が落ちそうになっていたコハクの手は綺麗に元通りになっていた。
その手を見つめながらリロイに攻撃するのではと片時も自分から目を離さないティアラにすれ違いざま小さく呟いた。
「ありがとな」
「…気持ち悪いわ、やめて」
素っ気なく返されて肩を竦めると、顔面蒼白のラスを抱き上げて額にキスをした。
「…ひやっとさせんなよな」
いつもいつも自分を驚かせるラス。
これからも、ずっとずっと――