魔王と王女の物語
…本当にラスと一緒にこの城へ戻って来る日が来るなんて――
そして同時に、それを悔いてもいた。
城内は外見と違って薄暗く、じめじめとしている。
元々は独りでここでずっと暮らしてきたのだから、自分以外の誰かから城を評価されることもなく、また気にしなかった。
ラスには…太陽の下が似合っている。
自分にとっては静かでいて落ち着く空間だったが…ラスが見て何というか。
――コハクは腕にラスを抱きながら階段を上り、しきりにラスの頬にキスをしながら青白い顔を見つめ続けた。
…まだまだ綺麗になる。
まだまだ自分を驚かせ続けてくれるだろう。
「ラス…」
愛しさを込めて名を呼ぶと少しだけ唇が開いた。
まさか…
まさか飛び出てくるなんて――
「俺が…死ぬかと思った」
最上階へ着くと、そこは1フロア全てが自分の部屋。
ここで長い間独りで…いや、ベルルも居たけれど、あの黒妖精には契約もしてないし呪いで縛ってもいない。
身体の関係こそあったが、心は傾かなかった。
…それをまだラスに話していない。
数々の姫を抱いたことも、まだ話していない。
話せばここから出て行くだろうか?
「…今まで言わなかった俺が悪いよな」
ドアを開けて中へ入ると、埃を被っていると思っていた部屋は綺麗に掃除されていた。
真っ黒で大きなベッドも埃ひとつなく、ラスをゆっくりと下ろすと、やわらかいベッドに身体がふんわりと沈んでゆく。
コハクは下心ひとつ抱くこともなくラスのドレスを脱がせると、胸の谷間に無残にあった魔法剣の痕が消えているのを見て盛大に息をついた。
「よかった…。チビ、綺麗にしてやるからな」
痕は消えているが、身体は血に染まっている。
キッチンもトイレもバスもついている広い室内を歩いてキッチンへ向かうとお湯を沸かしながらラスに何度も目を遣った。
何度も何度も目を遣って、
何度も何度も…名を呼ぶ。
「ラス…、俺はお前が居ないと生きてけねえ。ラス…」
誰かの名をこんなに口にしたことはない。
こんなにもラスは自分を虜にしている。
そして同時に、それを悔いてもいた。
城内は外見と違って薄暗く、じめじめとしている。
元々は独りでここでずっと暮らしてきたのだから、自分以外の誰かから城を評価されることもなく、また気にしなかった。
ラスには…太陽の下が似合っている。
自分にとっては静かでいて落ち着く空間だったが…ラスが見て何というか。
――コハクは腕にラスを抱きながら階段を上り、しきりにラスの頬にキスをしながら青白い顔を見つめ続けた。
…まだまだ綺麗になる。
まだまだ自分を驚かせ続けてくれるだろう。
「ラス…」
愛しさを込めて名を呼ぶと少しだけ唇が開いた。
まさか…
まさか飛び出てくるなんて――
「俺が…死ぬかと思った」
最上階へ着くと、そこは1フロア全てが自分の部屋。
ここで長い間独りで…いや、ベルルも居たけれど、あの黒妖精には契約もしてないし呪いで縛ってもいない。
身体の関係こそあったが、心は傾かなかった。
…それをまだラスに話していない。
数々の姫を抱いたことも、まだ話していない。
話せばここから出て行くだろうか?
「…今まで言わなかった俺が悪いよな」
ドアを開けて中へ入ると、埃を被っていると思っていた部屋は綺麗に掃除されていた。
真っ黒で大きなベッドも埃ひとつなく、ラスをゆっくりと下ろすと、やわらかいベッドに身体がふんわりと沈んでゆく。
コハクは下心ひとつ抱くこともなくラスのドレスを脱がせると、胸の谷間に無残にあった魔法剣の痕が消えているのを見て盛大に息をついた。
「よかった…。チビ、綺麗にしてやるからな」
痕は消えているが、身体は血に染まっている。
キッチンもトイレもバスもついている広い室内を歩いてキッチンへ向かうとお湯を沸かしながらラスに何度も目を遣った。
何度も何度も目を遣って、
何度も何度も…名を呼ぶ。
「ラス…、俺はお前が居ないと生きてけねえ。ラス…」
誰かの名をこんなに口にしたことはない。
こんなにもラスは自分を虜にしている。