魔王と王女の物語
両親が心配するといけないので、
コハクことコーに話しかけるのは自室に居る時だけにすることにしていたラスは、
スケッチブックにクレヨンで絵を描きながら自身の影に話しかけた。
「コーは悪い人なの?」
『ああそうさ、だからお前の父ちゃんにこてんぱんにやられたんだ。だけど死んでないぜ、俺は死なないからな』
「ふうん…。なんで私の影になってるの?私をどうするつもり?」
手を止めて鮮やかなグリーンの瞳で影を見つめると…
また影からくつくつと笑う声が聴こえた。
『そうだな、もうちっと成長したら教えてやるよ。俺は嫌われもんだからさ、みんなの前で話しかけるなよ。お前が変な奴だと思われるぞ』
「うん、わかった」
まだ6歳だというのに、一人娘のラスはとても大きな部屋を与えられ“勇者の娘”として民たちからも可愛がられている。
ラスはコハクが悪い人だと信じられず、いつも話し相手になってくれるコハクが大好きだった。
「ねえコー、コーの姿ってどんなの?かっこいいの?かっこ悪いの?」
『俺?俺はすげえかっこいいぜ。お前なんかすぐに俺に惚れてしまうほどにな』
「ほんと?お父様よりかっこいいの?」
ラスの中では父王のカイが1番で、コハクが2番。
しかしコハクの姿は見たことがなかったので、
想像で絵を描いて、スケッチブックを影に向けて見せた。
「こんなの?」
『…お前…それは“絵”じゃねえよ』
溜め息をつかれて、ラスはスケッチブックに目を落とす。
スケッチブックには…
黒く塗りつぶされた丸い球のような絵。
「だってコーはいつもこんなんでしょ?」
『そりゃ今はお前の影だけど…まあいいや、とりあえず歯磨いて早く寝ろ。俺も眠たいんだよ』
「はーい。おやすみ、コー」
ラスがベッドに潜り込んだと同時に、
部屋のあちこちに置かれていた燭台の火が全て消えた。
それもいつものことなので、
ラスは何の疑問を抱くことなくそのまま眠った。
コハクことコーに話しかけるのは自室に居る時だけにすることにしていたラスは、
スケッチブックにクレヨンで絵を描きながら自身の影に話しかけた。
「コーは悪い人なの?」
『ああそうさ、だからお前の父ちゃんにこてんぱんにやられたんだ。だけど死んでないぜ、俺は死なないからな』
「ふうん…。なんで私の影になってるの?私をどうするつもり?」
手を止めて鮮やかなグリーンの瞳で影を見つめると…
また影からくつくつと笑う声が聴こえた。
『そうだな、もうちっと成長したら教えてやるよ。俺は嫌われもんだからさ、みんなの前で話しかけるなよ。お前が変な奴だと思われるぞ』
「うん、わかった」
まだ6歳だというのに、一人娘のラスはとても大きな部屋を与えられ“勇者の娘”として民たちからも可愛がられている。
ラスはコハクが悪い人だと信じられず、いつも話し相手になってくれるコハクが大好きだった。
「ねえコー、コーの姿ってどんなの?かっこいいの?かっこ悪いの?」
『俺?俺はすげえかっこいいぜ。お前なんかすぐに俺に惚れてしまうほどにな』
「ほんと?お父様よりかっこいいの?」
ラスの中では父王のカイが1番で、コハクが2番。
しかしコハクの姿は見たことがなかったので、
想像で絵を描いて、スケッチブックを影に向けて見せた。
「こんなの?」
『…お前…それは“絵”じゃねえよ』
溜め息をつかれて、ラスはスケッチブックに目を落とす。
スケッチブックには…
黒く塗りつぶされた丸い球のような絵。
「だってコーはいつもこんなんでしょ?」
『そりゃ今はお前の影だけど…まあいいや、とりあえず歯磨いて早く寝ろ。俺も眠たいんだよ』
「はーい。おやすみ、コー」
ラスがベッドに潜り込んだと同時に、
部屋のあちこちに置かれていた燭台の火が全て消えた。
それもいつものことなので、
ラスは何の疑問を抱くことなくそのまま眠った。