魔王と王女の物語
「やだ、リロイ、どこに行くの!?」


「どこにも行かないよ。この大きな蜥蜴を移動させようと思って…」


長い尻尾を引っ張りながら2mはあろうかという魔物を引きずってラスから遠ざけようとしたが、

ラスはその手を握ってまたいやいやをした。


「やだ、傍に居て!」


「…影が居なくて寂しい?僕は影の代わり?」


「え…?違うよ、リロイはコーじゃないでしょ?なんで?代わりって…?」


つい嫉妬心でラスを責めるようなことを言ってしまったリロイは、肩で息をついた。


「ごめん、やつあたりしちゃった。ラス…さっきの…どうだった?」


いつもコーがしてくるようなものではなく、

口の中に舌が入って来るという慣れない経験を2度して、少し考えたが、頷いた。


「うん、でもさっきのは…なんか恥ずかしかった…」


マントを引っ張ったまま俯いたラスにきゅんとして、魔物の尻尾から手を離すとラスを抱き上げた。


「じゃあもう1回する?もう1回してくれたら僕の機嫌も直るかも」


――だんだんリロイが勇者様に見えてきて、細いががっしりとした両肩に手を添えると、ちゅっと軽く唇を重ねた。


だがリロイの金色の瞳はきょとんとして、ラスは猛然とまくし立てた。


「コーが帰って来るから、見られたら秘密じゃなくなっちゃう」


「じゃあこうしよっか」


コハクが消えて行った森の方からは完全に死角になった位置で…


今までの想いをありったけ込めてキスをして舌を絡めると、何度もラスの身体が引きつった。


「…これ、好きでしょ?」


「うん、気持ちいい」


「僕も気持ちいい」


くす、と笑い合ってまた同じようにして唇を重ねていると…


「おーいチビー、どこ行った?」


「!こ、コーだ!」


「しーっ」


「ん、んん…っ」


リロイは続行した。


ドレスの上から可愛いお尻に触れると、金色の睫毛が震えてまた昂ってしまう。


「チビー?」


「ごめん、白騎士にあるまじき行為だよね。さ、降りて」


「…またしようね」


コハクがひょこっと顔を出して、瞳を尖らせた。
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