魔王と王女の物語
リロイと鬼ごっこを開始して1時間。
木の枝にドレスの裾を引っ掻けて破いたり、
腕にもひっかき傷が沢山できてしまい、コハクから注意を受ける。
『チビ、あんまり身体に気をつけるなよ。真っ白な肌に傷なんかついたら萎える』
「萎える?何が?」
『発音が違う。ナニが、だよ』
「?」
時々コハクは意味のわからないことを言ってラスを困らせたが、
今は自分が鬼なのでリロイを捜さなければならないのだが…
のんびり屋の気があるので蝶を追いかけて夢中になったり小川に脚を浸して一休みしていると――
「見つけたぜ、王女だ!」
「え?」
どこから侵入してきたのか…
明らかに城の者ではない無精ひげを生やした男がいきなりラスを背後から羽交い絞めして動けなくした。
「王女様、ちょいと人質になってもらうぜ。俺はこれで大金持ちだ!」
興奮した男が力を緩めずに首をしめてきて意識を失いかけた時――
「ラスから離れろ!」
――結局ラスがいつも見つけてくれないので、発見されやすいように近くまで来ていたリロイが異変に気付き、飛び出た。
男は一瞬びくっとなったが、
リロイは男ではなく…震えるラスの影に向かって怒声を張り上げた。
「なんで助けないんだよ!」
『危険なことも知っておかないといけないだろと思ったんだよ。ほれ、お前が助けろ』
「な…っ、影が喋った!?」
まさか“魔王憑きの王女”だとは知らなかった男はラスを突き飛ばし、転んだ拍子でまた擦り傷を負い、さすがにコハクが声を上げる。
『おい、チビを傷付けるな!萎えるだろ!』
「リロイ、助けて!」
「ラス、目を閉じてて!」
――ゴールドストーン王国が誇る“白騎士団”は剣の腕の立つものしか入団できず、
リロイは剣の筋が良いと言われ、幼いながらも入団が許されて、
“これでラスの傍でラスを守っていける”と喜んでいた。
素直に両目を手で覆ったので、腰に下げている剣をすらりと抜くと正眼に構えた。
「ガキなんかにやられるか!いくぜ!」
コハクが笑った。
木の枝にドレスの裾を引っ掻けて破いたり、
腕にもひっかき傷が沢山できてしまい、コハクから注意を受ける。
『チビ、あんまり身体に気をつけるなよ。真っ白な肌に傷なんかついたら萎える』
「萎える?何が?」
『発音が違う。ナニが、だよ』
「?」
時々コハクは意味のわからないことを言ってラスを困らせたが、
今は自分が鬼なのでリロイを捜さなければならないのだが…
のんびり屋の気があるので蝶を追いかけて夢中になったり小川に脚を浸して一休みしていると――
「見つけたぜ、王女だ!」
「え?」
どこから侵入してきたのか…
明らかに城の者ではない無精ひげを生やした男がいきなりラスを背後から羽交い絞めして動けなくした。
「王女様、ちょいと人質になってもらうぜ。俺はこれで大金持ちだ!」
興奮した男が力を緩めずに首をしめてきて意識を失いかけた時――
「ラスから離れろ!」
――結局ラスがいつも見つけてくれないので、発見されやすいように近くまで来ていたリロイが異変に気付き、飛び出た。
男は一瞬びくっとなったが、
リロイは男ではなく…震えるラスの影に向かって怒声を張り上げた。
「なんで助けないんだよ!」
『危険なことも知っておかないといけないだろと思ったんだよ。ほれ、お前が助けろ』
「な…っ、影が喋った!?」
まさか“魔王憑きの王女”だとは知らなかった男はラスを突き飛ばし、転んだ拍子でまた擦り傷を負い、さすがにコハクが声を上げる。
『おい、チビを傷付けるな!萎えるだろ!』
「リロイ、助けて!」
「ラス、目を閉じてて!」
――ゴールドストーン王国が誇る“白騎士団”は剣の腕の立つものしか入団できず、
リロイは剣の筋が良いと言われ、幼いながらも入団が許されて、
“これでラスの傍でラスを守っていける”と喜んでいた。
素直に両目を手で覆ったので、腰に下げている剣をすらりと抜くと正眼に構えた。
「ガキなんかにやられるか!いくぜ!」
コハクが笑った。