魔王と王女の物語
「ようフィリア、久々だな」
「魔王…よくぬけぬけと私の前に姿を現したわね」
――途端フィリアの掌に白い光の塊が現れて、それを見たコハクはリロイに顎で命令した。
「チビの目塞いどけ」
フィリアから引き剥がされ、そしてリロイから手で目を覆われて何も見えなくなったラスが声を上げる。
「リロイ?コー?何してるの?」
「スキンシップ、さ!」
――ごう、と風が唸りを上げる。
みるみる暗雲が頭上に立ち込めて、ラスの嫌いな“ゴロゴロ”という音が空気を振動させた。
「チビ、耳塞いどけ」
何が何だかわからなかったが、とりあえず素直に耳を塞ぐ。
それを確認したコハクはなおいっそう禍々しい笑みを浮かべ、右手の掌に真っ黒な力の塊を作り出した。
「フィリア…ここでそれとこれをぶつけていいのか?こんな街くらい吹っ飛ぶぜ」
「…」
眉を潜めたフィリアの美しい顔を見て、それでせいせいしたコハクは瞬時にその黒い塊を空に向けて投げると、暗雲が弾け飛んで、先程の快晴が姿を現した。
「小僧、もういいぞ。…チビに触んな!」
――そのコハクの言動に、フィリアは内心違和感を感じていた。
…ラスを見つめる瞳…
こんなに和やかに笑う男じゃなかった。
あの針山の上の城で独りだった魔王。
カイを中心に戦いを挑んだあの時――
コハクの魂は、荒んでいた。
「…何がお前を変えたの?」
「はあ?俺は何も変わってねえよ」
まだ耳を塞いでいるラスの手を外して抱き上げると、勝手に城の中へと入って行く。
「コー、“お邪魔します”って言わなきゃ!」
「お邪魔しまーす」
ラスをお姫様抱っこしたまま城の中へ消えて行ってしまい、ため息をつきながら、リロイと握手を交わした。
「あなたが白騎士団の隊長ね?それはカイの魔法剣……懐かしいわ」
視線で愛でて、過去を振り返るフィリアの黒瞳には愛情がにじみ出ていて、
片膝をつくと、恭しく魔法剣を差し出した。
「どうか魔王を殺せる力をお授けください」
「…来なさい」
本当の目的を――
「魔王…よくぬけぬけと私の前に姿を現したわね」
――途端フィリアの掌に白い光の塊が現れて、それを見たコハクはリロイに顎で命令した。
「チビの目塞いどけ」
フィリアから引き剥がされ、そしてリロイから手で目を覆われて何も見えなくなったラスが声を上げる。
「リロイ?コー?何してるの?」
「スキンシップ、さ!」
――ごう、と風が唸りを上げる。
みるみる暗雲が頭上に立ち込めて、ラスの嫌いな“ゴロゴロ”という音が空気を振動させた。
「チビ、耳塞いどけ」
何が何だかわからなかったが、とりあえず素直に耳を塞ぐ。
それを確認したコハクはなおいっそう禍々しい笑みを浮かべ、右手の掌に真っ黒な力の塊を作り出した。
「フィリア…ここでそれとこれをぶつけていいのか?こんな街くらい吹っ飛ぶぜ」
「…」
眉を潜めたフィリアの美しい顔を見て、それでせいせいしたコハクは瞬時にその黒い塊を空に向けて投げると、暗雲が弾け飛んで、先程の快晴が姿を現した。
「小僧、もういいぞ。…チビに触んな!」
――そのコハクの言動に、フィリアは内心違和感を感じていた。
…ラスを見つめる瞳…
こんなに和やかに笑う男じゃなかった。
あの針山の上の城で独りだった魔王。
カイを中心に戦いを挑んだあの時――
コハクの魂は、荒んでいた。
「…何がお前を変えたの?」
「はあ?俺は何も変わってねえよ」
まだ耳を塞いでいるラスの手を外して抱き上げると、勝手に城の中へと入って行く。
「コー、“お邪魔します”って言わなきゃ!」
「お邪魔しまーす」
ラスをお姫様抱っこしたまま城の中へ消えて行ってしまい、ため息をつきながら、リロイと握手を交わした。
「あなたが白騎士団の隊長ね?それはカイの魔法剣……懐かしいわ」
視線で愛でて、過去を振り返るフィリアの黒瞳には愛情がにじみ出ていて、
片膝をつくと、恭しく魔法剣を差し出した。
「どうか魔王を殺せる力をお授けください」
「…来なさい」
本当の目的を――