魔王と王女の物語
がむしゃらに走った。


友情の証――

それははたから見るとあんなに情熱的なもので、そしてラスの胸をかきむしるような痛みを与えた。

マーメイドドレスは走りにくくて、柔らかい絨毯に脚を取られて転んでしまって、

立ち上がれずに俯いていると…


「ラス!?」


「…リロイ…」


フィリアと共に、あの急な傾斜の階段から駆け降りてきたリロイがすぐに片膝をついて、

青痣になっているラスの右脚の膝に触れると、抱き上げた。


「フィリア様、お話はまた後程」


「ええ、その痣、あとで私が魔法で治してあげましょう」


その間ラスは一言も発さずただリロイの首に腕を回して抱き着いて、そんなラスをおかしいと思いつつも緋色の騎士団から客室に案内されて、


天蓋つきのベッドにラスを下ろした。


「よく見せて。…結構派手に転んじゃったね」


「…リロイ…口と口をくっつけるって…特別なこと?」


「え…」


突然ラスがそう言って、でひざまずいているリロイの唇に人差し指で触れてきた。


「ちょ、ラス…?」


「お姫様が魔法から目覚めるには王子様のキスが必要。でもコーやリロイとしてるのって…キスじゃないよね?友情の証だよね?」


「…うーん、いろんな解釈があると思うけど…それがどうしたの?」


不自然にならないように青痣を見るふりをして伏し目がちになっているリロイの両頬を手で挟んで、顔を上げさせた。


「じゃあ…キス…して?」


「え…?!その…王子様のキスってやつを?!」


「私…悪い魔法にかかっちゃったみたいなの。胸が痛いの…。リロイ、どうしよう…」


両手で顔を覆って今にも泣きそうになっていた顔を隠してベッドに身体を横たえたラスに無限の愛情が沸いてくる。


――ぎし、と音を鳴らせて背中を向けたラスに覆い被さり、振り向かせた。


「後悔しない?」


「うん。魔法…解いて欲しいの。リロイが王子様なら…勇者様なら、できるでしょ?」


「いいよ。ラス…」


――優しく唇が重なる。


その感触に唇が少し開くと、舌が入ってきた。

身体は跳ねて、リロイはラスを離さなかった。
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