魔王と王女の物語
不器用に舌を差し込んできたラスは、瞳を閉じながらも顔を真っ赤にさせて必死に努力していた。


…魔王にとってはそれがどうしようもなく萌えで、


がむしゃらに舌を動かして狙いの定まっていないラスに焦らされ続けたコハクは…


急にラスの腰を強く抱いて横向きに抱っこすると、


長い眠りについているどこかの姫も一発で目覚めてしまうほどの強烈な“レロレロ”をラスにお見舞いして、腰砕けにさせた。


「私がしなきゃ意味がないんじゃないの?」


「だって下手っぴなんだもん。まあ今日はこれで勘弁しといやるか。フィリアんとこ行こうぜ」


生まれたての小鹿のように脚をガクガクさせながらコハクに手を引っ張られて何とか立ち上がったラスの下に、リロイが駆けてきた。


「ラス、捜したよ」


「あ、リロイ。あのね、コーが膝の青痣を治してくれたの。魔法ってすごいね!」


「もっと敬いなさい崇め奉りなさい!」


「コー、すごい!偉い偉い!」


「最高の勇者様、だろ?」


スキップでもしそうな勢いで上機嫌のコハクがラスと仲直りしたのは明白で、

がっかりなような、そうでないような気分になりながらもリロイが先導してフィリアの元へと導く。


「フィリア様とどんなお話したの?」


「え?…大したことは話してないよ?魔法剣に加護をお与えくださって、それだけ」


「ふうん?ねえコー、リロイ…、フィリア様の胸、すごかったね。私もあんな風になれるのかなあ?」


両手で胸を抱えるような仕草をしたラスに真っ赤になったリロイに対し、


コハクは何回も首を振ってラスを馬鹿にした。


「無理無理無理。第一あんな爆乳肩がこるだけだぜ。ボイーンとなりたけりゃもちっと食えって言ってんだろが」


「今日から沢山食べるもん!リロイ、お金ある?私ものすごく沢山食べて胸おっきくするから!」


「え、えと…旅に困らない十分なお金は陛下からお預かりしてるから大丈夫だけど…、む、胸なんて気にしなくったって僕は…」


どもりながら自説を唱えてみたが、魔王の大笑いがそれをかき消した。


「せめて胸の谷間がもちっと見える位大きくしろ」


ラスの頬が膨れた。
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