魔王と王女の物語
フィリアに似て胸が“ぼいーん”となっていて、


唇を尖らせながらラスがまた胸元を少し覗いてため息をついた。


「ラス王女と同い年の17です。フィリアの力を受け継ぎ、白魔法を使うことができます。旅のお役に立てるでしょう」


同い年と聞いてさらに内心驚愕していたが、

リロイが立ち上がり、コハクを値踏みするような瞳で見つめているティアラの前で再び片膝をつくと、恭しく細い手を取って、キスをした。


「白騎士団のリロイと申します。魔王の城までの旅はたいへん危険を伴いますが…」


「自分の身くらい自分で守れます。お気になさらずに」


…顔に似合わず気が強いらしく、フィリアが肩を竦めて娘の非礼を詫びた。


「礼儀知らずでごめんなさいね。さあラス王女、パーティーの準備ができるまでお部屋で寛いで下さいね。ティアラ、案内してあげて」


「どうぞこちらです」


――早足で先頭を行くティアラに置いていかれないように、ラスもちょこちょこと早足で歩いて頑張ったが差は開くばかり。


「歩くの速い…」


「俺が抱っこして連れてってやるよ」


「いや、僕が」


2人が同時に手を差し伸べてきて、

どちらかを選びたくなかったラスは2人の真ん中に立つと、2人の手を握って笑いかけた。


「追いつけなくってもいいや、引き返して捜してくれるよね?」


「ったく相変らずものぐさだな」


そう言いつつもラスの我が儘に付き合ってやりながら、コハクは再びにたりと笑った。


「調教し甲斐のありそうなツラだよな。ああいう気の強い女をいかに骨抜きにさせるが楽しいんだ」


「骨抜き?誰の骨を抜くの?死んじゃうよ」


「チビは知らなくっていいの。なあ、パーティーの前に風呂入るだろ?ゆっくり浸かれよ、また長旅になるからな」


そう言われて俄然長風呂するつもりになったラスはコハクとリロイを見上げた。


「一緒入る?」


「え!ぼ、僕は…いいや…」


「俺は入る。俺の身体、見たいんだろ?」


「!違うもん、コーの馬鹿、変な言い方しないで!」


ティアラが引き返してきた。

そうしながら、まだ魔王を値踏みしていた。
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