お姫様だっこ
相変わらずザワついてる教室。
「美優遅くなぁい?」
菜帆が飛びついてきた。
「ごめんごめん。ちょっとね、慎のトコ行ってきた」
「えーーっ!?」
菜帆の甲高い声が響いた。
教室中の視線があたしと菜帆に集中する。
菜帆は慌てて両手で口を塞いで席に着いた。
みんなの視線はスグ元に戻って再びザワザワとそれぞれの会話をしている。
「菜帆ー声デカすぎ」
「ごっめぇん…でもぉ、ズルい。菜帆置いて1年のトコ行ったんだもぉん」
菜帆の頬がプゥッと膨らんだ。
「ごめんって。研と行ったんだよ?慎が研に会いたがってたから」
「昨日会ったじゃん」
菜帆にしては鋭い突っ込み。
「いや、そうなんだけどね…」
机の上に鏡を置いて髪をチェックしながら昨日の慎からのメールの説明をした。
「ふーん…。ってか早速慎くんとメールしてんだ?」
「昨日メールきたから少し返しただけよ?しかも研の話しただけだし」
グロスを塗り直して鏡を閉じた。
「美優さぁ、呑気だけど本当に慎くんは美優を好きじゃないと思うの?」
菜帆が珍しく真剣な眼差し。
「へっ?慎はあたしの事ただの先輩としか思ってないでしょ。しかも研の彼女って知ったからそんな気持ちあるわけないじゃん」
あたしは笑いながら言った。本当にそう思ったから。
あたしとは正反対に菜帆は眉間にシワを寄せながら何か考えてる。
「菜帆が思うにはー、慎くんには油断しないほうがイイんじゃなぃ?…」
何故かを聞こうとしたらタマちゃんが入ってきたので話は中断した。