お姫様だっこ



「最近、またおじいちゃんが暴れる事が多くなってね。この前とうとう…おばあちゃんが出て行ったんだ。3日後に帰ってきたんだけどね」


「そうだったのか…」



「でね、それが凄く辛くなって今まで我慢してきたものが爆発して…」



あたしは少し声を詰まらせそうになった。


でも研の手の暖かさを感じてたから頑張ろうって思えた。



「爆発しちゃった日の朝ね、授業中に夢見たんだ」


「夢?」


研が不思議そうにあたしを見る。



「ママの夢…。2人で楽しく過ごしてんの。恋の相談とかしちゃったり、今、絶対叶わない夢…」



また思い出してきた…



「それでね、その夢を見たせいか、悲しさがいつもより大きくなってね。家に誰も居ないしおじいちゃんが暴れた後の部屋を見て…うわぁーってなって。部屋に入って…目の前にカミソリがあって…気づいたら血が出てたの」





研の瞳が潤んでるように見えた……。



あたしは話し続ける。



「でもね、前の日の夜、おばあちゃんが出てった日に既に腕に傷つけてたの。でも記憶がなかった。次の日わかったの。手に持ってるカミソリを見て昨日もこれで傷つけてたんだって。あたし…頭変でしょ?」


ははって笑ったら、




「ふざけんな!!」



研の怒鳴り声が保健室に響いた。







驚いてポカァーンって口が開いた。
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