愛されたかった悪女
「本当に会社を辞めてしまっていいの?」


条件の良い所はこの先見つからないかもしれない。


「ああ。言おうと思っていたんだけど、イギリスの会社からヘッドハンティングがきているんだ。もちろん、君がイギリスに行きたくないと言うのならそこは受けないけど」


イギリス……。


もうニューヨークにこだわらない。


モデルになりたくてリッチな生活を夢見た頃の私……。


たくさんのものを犠牲にして、すべてを手に入れた今の私には無意味なものに思えた。


「ジョンが思うようにすればいいわ。私はついていく」


ジョンの顔が明るさを増した。


たぶんこの話を切り出すのに勇気がいったに違いない。


「ありがとう。エステル!愛しているよ」


私の唇にちゅっと音をたててキスをするとジョンは出て行った。


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