愛されたかった悪女
その夜、帰宅したジョンの唇が少し切れていた。


笑いながらハヤトに殴られたと言った。


アキさんを脅したことを認めると、一発殴られたと。


「隼人にこの先の事を話したんだ」


「……」


彼は私がイギリスに行けば嬉しいはず。


「彼は黙って聞いてくれた。手続きもすぐにすると約束してくれたよ」


「そう……」


ハヤトが喜んでいるかと思うと、胸が少し痛んだ。


「エステル、最後に隼人が君を幸せにして欲しいと言ってくれた。自分では幸せに出来なかった。寂しがり屋で心の中はいつも不安な人だから、包み込んでやってくれと」


ハヤト……。


「時間をかけて、愛される自信を君につけさせるからね」


「ジョン……ありがとう」


私はジョンに抱きつき、唇を重ねた。



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