愛されたかった悪女
「積極的な君は、君らしくていいな 消極的なのは似合わないよ」


「そうよ、私はモデル界のトップを行くエステル・コーワンなんだから」


「あ、それから隼人さんは商談でカンクンに行くよ 亜希さんも連れて行くらしい 秘書が航空券を取っていたから」


「カンクン?」


「あぁ カンクンのホテルを紫藤不動産が買収する予定なんだ」


私の心は急に焦りを感じた。


大事な商談の仕事にあの子を連れて行くなんて……。


「だめよ……」


「えっ?何が?」


ジョンは分からなくて頭を起こして、私をじっと見ている。


「あんな場所へ行ったら、ふたりの愛が深まってしまうわ」


私は考えを振り切るように大きく首を横にふる。


「エステル、落ち着いて」


「落ち着けないわ!私もカンクンへ行くわ」



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