愛されたかった悪女
「バラチエのショーなど、適当に済ませればいいんだ」


苦々しげに言うと、ローブの紐をほどきにかかる。


同じフランス人デザイナーとして、ファビアンは大御所だが、今はバラチエの方が勢いがあり、彼にとって目の上のたんこぶ的存在らしい。


首筋にちりっと痛みを感じた。


「ファビアン!つけないで!貴方もデザイナーなら明日がどんなに大切か、分かっているでしょう!?」


首筋にキスマークを付けられてしまい、私は彼を思いっきり突き放した。


「すまない つい君に欲情した」


「今日はだめなのよ 他の子と寝たらいいわ」


「本当に君は氷のような女だな だが、ベッドの中では氷河も溶けるほど熱い女だと知っている 明日の事など気にせずに私を満足させてくれ」


拒絶をしても、全く分かってくれない男に、私は眩暈がしそうだった。


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