愛されたかった悪女
「ワインでもいかが?」


「何もいらない」


「そう……私は喉が渇いたから、飲ませてもらうわね」


テーブルに用意した良く冷えた白ワインをグラスに注ぐ。


「話って?」


間違いなくあの子の事だろうと、見当はついているけれどわざと聞いてみる。


「妻から離婚届が送られてきたよ」


「あら……離婚届が……?」


行動に起こしてくれたことを内心嬉しく思った。


「彼女に何をした?」


冷静になろうと努めているようで、両腕を解いた手は膝の上に置かれ、グッと握られている。


「何もしていないわ。私はもうお手上げだったのよ?ハヤトは結婚してしまったのだから」


「結婚しても俺の前に現れただろう?」


私はクスッと笑みを漏らす。


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