愛されたかった悪女
ジョンの手を押しのけてリビングに向かう。


「エステル!」


「ちょっと飲みすぎただけ、これぐらいのことでぐちゃぐちゃ言わないで!」


きつい言い方なのはわかっている。


だけど、ジョンの心配にイラつく。


「エステル……ハヤトから手紙を預かって来た」


昨晩、オフィスにハヤトは現れデスクに手紙を投げ置いた。


「ハヤトがなぜあなたに?」


頭の痛みを堪えて、ジョンを見上げる。


「俺も読めということなのだろう。法律家の俺に……」


ジョンは私に分厚い封筒を渡した。


今は見たくない……。きっと恐ろしいこと――私にとって良いことが書かれているはずはない。


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