愛されたかった悪女
「それで……もう読んだの?」


「……ああ。先に読ませてもらった……」


その声は沈んでいる。


やはり良くないことが書かれているのね。


「読みたくないわ」


そっぽを向く私にジョンの大きなため息が聞こえてきた。


「エステル!もうこんなことはやめよう。ハヤトは君の過去を洗いざらい調べている。君のやってきたことを全部だ」


「!?」


「これを読めば、君が書いた暴露本はたいした内容にではない。これをマスコミに公表されたら君はおしまいだ……」


どれほどのことが書かれてあるのか……その人生を歩んできたのは私。


酷いのはわかっている……。


読まなくてもわかっている……。


ハヤトは嘘を書かないだろう。


もうハヤトを取り戻せない……。そう実感した時だった。


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