愛されたかった悪女
「……君をひとりにはできないよ」


「同情ならいらないわ。ジョン、あなたも解放してあげる。このままだと会社を辞めなくてはならないのでしょう?」


手にしている紙をテーブルに放り投げる。


「エステル!同情なんかじゃない!」


「いろいろな男に抱かれた私を知っても気持ち悪いと思わないの!?」


私は顔をしかめながら立ち上がる。


向かう先はキッチン。


「エステル!自分を卑下するのは、やめろよ!」


「私は汚い女よ!もうこの身体なんて見たくないっ!」


私の頭は狂い始めていた。


もう何もかもが嫌になって、手が無意識にナイフを探している。


「エステル!何をしているんだ!?」


ナイフを掴もうとしているのが、ジョンにも分かったのだろう。


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