愛されたかった悪女
ナイフの柄を手にした時、横からジョンの手が伸びてきた。


「エステル!」


「離して!」


ジョンに抑え込まれ、手が動かせない。


「バカなことを考えるのは止めるんだ!」


「私がいなくなればすべておさまるのよ!」


ジョンの手を離そうと、身体を大きく動かしもがく。


「エステル!」


激しく動く私たちは「あっ!」と思った時には床に倒れていた。


私はジョンにかぶさるように倒れた。


手に嫌な感覚が伝わる――。


次の瞬間、ジョンの呻き声が聞こえてきた。


「ジョンっ!」


私の持っていたナイフがジョンの腕に刺さっていた。


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