あの空の距離まで
教頭



俺はしばらく屋上にいた
彼女が帰ってくるかもしれない
そう思ったから

でも彼女は結局帰ってこなかった


放課後
教頭先生が中庭で白い、よく死んだ人に捧げる様な花束を持っていたので、気になって声をかけた


「教頭先生。何してるんすか」

「あぁ伊吹くん。こんにちは」

ゆっくりとした口調で教頭は話す
あまり生徒に強要もせず優しいけど、絞めるときには絞める
そんな先生だ
俺は嫌いじゃない


「はぁ、こんにちは。ところで何してんすか?」

「ん。いやね、今日はこの子の命日だから…」

そう言って教頭は目の前にある小さな石碑を見つめた


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