雪花
 
 壮大な池には、鯉が優雅に泳いでいる。池の辺に見事な菫が咲き誇っている。


紫色の菫が、風と共にゆらゆらと揺れていて春の匂いを運ばせる。その光景は実に明媚であった。


池の辺に近づいてくる足音が聞こえる。それは、小さな女子の姿だった。女子の肌は色白で、頬は桜色である。


眼はつぶらでとても可愛らしい顔つきをしている。


女子は、そっと菫に触れようとした。その手首には、勾玉が太陽の日差しで鮮やかな七色に輝く。


そのとき、女子の後ろから慌てふためく声が聞こえた。



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