蜜柑の香り
そう結論づけて顔を上げると、柔らかい笑顔が向けられた。
どうやらずっとこっちを見ていたらしい『ソイツ』に笑いかけると、やって来てノボルの隣に腰をおろす。

サラサラの黒髪に
優しい目元

彼の名は
秋廣 〔アキヒロ〕

通称 アキ。

細いフレームのメガネを軽く指先で直して、また少し笑うとアキは口を開いた。

「何かあったんですか?ノボル、百面相みたいやったんですよ、向こうから見てて。」

「…百面相?」

「かなり、見てて楽しくはありましたけどね?」

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