蜜柑の香り
…直感?
ただ、くせのある声にノリで合わせた音楽がやたらと耳に残った。

ここにはいないバンドリーダー

ユウが

勝手に決めただけ。

『期間限定でバンド組まへん?いい思い出なるやん、大学の。』

その時は思っていなかった。終わりが近づけば、自然に満足して終わるんだ…としか、思っていなかった。

そして今、大学三回生の夏。
この夏休みが最後だと、
確かにユウは言っていた。


「そういやさ、…」

思い出したようにノボルが呟く。置いた瞬間に、飲んでいたカシスオレンジの氷が軽快に鳴った。


「俺ら、もうすぐ解散やったっけ?」

コツコツ、
ノボルの指先がコップに当たって断続的に音を立てている。
落ち着かない時の彼のくせだ。それを横目で見るとショウはさぁ、と返して息をつく。
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