魔女の悪戯
クリスティア城
クリスティア城の一角。
石造りの、騎士の為の訓練場。
キィン、キィン──!
いつの間にか静まり返った室内に、剣と剣のぶつかる音だけが、やけに大きく響く。
そのうちの片方の剣を振るっている忠純は、使い慣れない両刃の直刀と、少なからず動きを制限される銀色の鎧に違和感を感じながら一進一退の攻防を繰り広げていた。
その様子を、他の騎士達は訓練の手を止めて固唾を呑んで見守っていた。
「どうしたレオ、今日は動きが鈍いぞ!」
そう叫ぶと、ロナウドは更に激しい攻撃を。
両刃の直刀を使い慣れない忠純には、それをギリギリで受け流すのがやっとで。
そもそも両刃自体が扱いにくい代物なのだ。
両刃は、そのまま──りょうば、と読むこともあるが、もろは、と読むこともある。
そう、忠純が今振るっている剣は、文字通りもろはの剣。
片刃で反りのある日本刀を使い慣れた忠純は、この両刃の扱い方に苦戦していた。
どちらかと言えば、こういう試合形式の訓練はいつもレオが主導権を握る形で、なかなか勝てなかったロナウドは今日なら勝てる、と何処か確信めいたものを持っていた。
それは、ただ単にレオが王女様の我が儘のせいで寝不足だからという訳ではなく、
いつもと違う太刀筋と、扱い難そうに剣を振るう忠純に、普段のレオとは違う何かを感じていたためであった。