魔女の悪戯
騎士の朝は早い。
訓練場にはもうほとんどの騎士仲間が集まっていた。
レオの姿を確認した親友の茶髪の騎士、ロナウドが駆け寄って来る。
「よう、遅かったな。」
「ああ…」
「相変わらず、夜中は王女様のお相手か?」
レオは無言で頷く。
ロナウドは、ははっと笑ってレオの肩に腕を回す。
「そりゃあ、災難だったな。
レオはすっかり王女様のお気に入りってわけだ。」
…人事だと思って。
昨日の夜なんか、変わった物語が読みたいから自分の目の前で書いてくれなどと無理難題を言われた挙げ句、気付いた頃には当の本人である王女は横で気持ち良さそうに寝息を立てていたというのに。
途中で辞めても怒られるだろうと、王女をベッドに寝かせ、眠気と戦いながら書き上げたものを置いて、一人部屋に戻ったのだ。
それから騎士の仕事をやって、眠りについたのは夜の3時くらいだった。
ある日はチェス、またある日はダンス、そのまたある日は絵画…。
我が儘王女の目に留まってから、ろくなことがない。
レオは大きなため息をついた。
そんなレオに、ロナウドは無言で剣を差し出す。
ひと試合どうだ、という意味で。
騎士達の訓練は基本自主トレーニングなので、レオはニヤリと笑みを浮かべて剣を受けとった。
そして、広い場所でロナウドに向き合い、剣を構えた、その時。
全身に電流が流れたかのような感覚に襲われた。