魔女の悪戯
岩佐城
「本当に、おめでたいことでございますわ。」
「ええ、まことに。」
にこにこと会話する侍女達に、ここ、岩佐城主の娘、柚姫はふんわりと微笑んでいた。
「姫様、まことに、まことにおめでとうございます。
明日にはいよいよお輿入れ…。
私、これまで姫様にお仕えいたしましたこと、生涯の誇りとさせていただく所存にございます。」
「お万代は大袈裟じゃの。
…ありがとう。」
柚姫はコロコロと笑う。
この柚姫は、明日、隣国の守槻城の若殿様に嫁ぐことが決まっていた。
守槻城主と姫の生家である岩佐城主とは、三代に渡る確執があった。
誰の目から見ても明らかな、政略結婚。
にも関わらず、姫はただ微笑んでいた。
「守槻の若殿様は姫様よりおふたつお年上と伺っておりますが、好青年だそうにございますよ。」
「…そう。」
姫はまた微笑む。
そんな姫の居る部屋を、庭から心配そうに見守る男がいた。