監禁恋情
自分が精神を病み、部屋に篭もっている時にも、なんの反応も示さず、様子を見に来ることさえなかった父と、紀一が会うのは本当に久しぶりで。

労いの言葉の1つもないのかと、紀一も、幹久のように冷徹な父親を睨みつけた。

「揃いも揃って、何を大の大人が殴り合っている。」

コツ…コツ…と靴を鳴らしながら、ゆっくりと近付いてくる。

「…今まで迷惑をおかけしました。
今後、慎ましく生きていくために、今日、兄さんや父さんと話をつけるつもりで、やって来ました。」

毅然とした態度で、紀一は言った。

「はっ、もう女の夢にうなされるのは終わりだとでも?」

幹久が、鼻で笑った。そして続ける。

「父上、こいつの気がおかしいのはご存知でしょう。またすぐに、我が家の恥となりますよ。」

そしてまた、睨み合う二人。

「…幹久。紀一。
二人とも、よく聞きなさい。」

あの厳しい父親が、まるで幼い子に話しかけるように、柔らかく言ったので、二人は思わず、父を見つめた。


「私は、決めた。






会社はお前たち二人以外の者に継がせる。」
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