監禁恋情
†††††††††††††††††

父親が大きなドアに手を掛け、ゆっくりと開くのを見ていた。

屋敷と呼べるほど大きな家の一角にあり、最も凝った作りのその部屋は、母と父の私室だった。

「静(しずか)。」

父親が呼んだのは、母の名前。

見つめる視線の先にはベッド。
そして、そこに座り込む1人の女性。

「奥様…」

自分と、それから兄の言葉を代弁するように、和樹が呟いた。

「あら、おかえりなさいあなた。
そちらの2人はお客様?
幹久、紀一、ご挨拶なさい。」

そう言って、整えれば、年相応には見えない顔だちのはずでも、寝巻きと乱れた髪によって老け込んで見える顔を、手元の2体のぬいぐるみに向けた。

「か…」

母さん。
そう言おうとした瞬間に、兄が呟いた。

「母上。幹久は俺です!
一体どうしたんですか!」

と、乱暴に詰め寄ろうとした。

「な…誰ですのあなた。
子供たちが驚いてしまいます、大きな声を出さないで下さい。」

母の怯えたような表情に、兄は言葉をなくした。

「静。すまないね。
また、夕食の時に、会いに来るよ。」

「ええ、晴仁(はるひと)さん。
待ってますわ。」

今度はまるで少女のように、父に対して顔を赤らめた。

そして、自分は何も言えないまま、4人で部屋の外に出た。
< 103 / 125 >

この作品をシェア

pagetop